ついにやってきた、一年ぶりの100km!!
この日を待ったぜぇ。
前回のブログからわかるとおり、気負いまくりw
昨シーズンは・・・那覇マラソンで自己ベストを大更新、このワイドー100kmもギリギリ完走から上位2割以内への大躍進、続く宮古島トライアスロンでも目標値を大きく超える好成績。
まぁ、絶好調だったわけだ。
そのイメージは強く残ってて、今年の自分はどこまで伸びてるのか楽しみで楽しみで。
・・・もっと早く気づけよ、エコマラソン、不調だったぢゃん。
ウルトラ仲間のノダ選手。
負けた方がパフェおごり。
超ベテラン、クロ選手。
いつから出てるのかよく知らないけど、この大会では毎年、スタート前の司会を務め、他の選手と一緒に100kmを走り、さっさと走りきって、大会後の親睦パーティでも司会進行を務める。
たぶん誰も真似できない。
今回目標にしている選手。
レース直前の天気予報は、曇りのち雨。
昼頃から降り出して、徐々に強くなり、強いときで3mmくらいの予報。
風は強いときで約8m。
タフなコンディションになるのは間違いない。
がしかし。
午前4時過ぎに会場に着くと、すでに降ってるじゃーありませんか。
選手たちもカッパを着始めている。
うーん、カッパかぁ。
例の「絶対晴れるカッパ」持ってきてるけど、着たくないなぁ。
ビニールをかぶって走ると、内側から蒸れるし、肌にひっつくし、シャカシャカいうのも不快なんだよねー。
長い旅路で、序盤から精神的ストレスをためたくない。
そんなことを思いながら荷物預かりの倉庫で雨宿りしていたら、スタート直前に雨がやむ。
お、幸先いいぞ♪♪
さて、いよいよスタート。
やや前方からスタートして、オーバーペースに巻き込まれないよう、5分50秒/kmをキープ。
それでも100kmではやや速いペースなのだが、多くの選手がどんどん抜いて前にいく。
ふふ。このペースをキープできるのはこの中のほんの一部さ。
50km過ぎで、去年みたいにゴボウ抜きだ♪
本大会は今年からコースが変わり、3本の橋を渡ることになっている。
何キロも海の上に突き出した橋は、風を遮るものが一切なく、陸地とは桁違いの強風が吹く。
まして今回の予報では・・・覚悟が必要だ。
スタートしてすぐに、来間大橋に差しかかる。
真っ暗の海の上を黙々と渡る・・・
あれ???
この橋、今年のコースだと、ほんのちょっと入ってすぐ折り返すんじゃなかったっけ??
ちょっと違和感があったが、他の選手たちと同様、橋の真ん中過ぎまで走って折り返す。
猛烈な横風。
うーわー。これ、正面からだったら死ねるな。
でもあと1~2時間でそれが現実になるのだ。
次の伊良部大橋は、来間大橋とは約90度角度が違う。
こっちが横風なら、あっちは向かい風。
さて、最初のエイドだ。
立ち止まるまでもなく通り過ぎるが・・・
あれ??5kmって書いてあるぞ??GPSは7kmなのに??
GPSにも誤差はあるが、5km走って2km狂うようなことはありえない。
まぁそこは宮古。
たぶん看板の位置を間違えたんだろ。
100kmマラソンでは最初の50kmは準備運動。
ここで体力、精神力を消耗していては、後半で地獄を見る。
タイムが伸びないのはもちろん、完走も危うくなる。
淡々と決めたリズムを刻むが・・・調子は悪くはないが、いいのかイマイチなのかよくわからない。
もう少しスピードを上げるとわかりやすいのだが、このペースだと負荷が軽すぎるからだ。
とりあえず、「呼吸のことを忘れられるペース」なので、多分後半に響くことはないはず。
さぁここで雨だ。
2mmとか3mmとかじゃない。
かなり強烈!!
カッパを出そうか迷うが、しばらく様子をみることに。
そんなこんなでいつの間にか伊良部大橋。
さぁくるぞ・・・あれ?
覚悟していた割に、意外と普通。
と次の瞬間、斜め後ろから空気の塊がぶつかってきた。
橋に入って数十mは、陸地の岩壁が風を遮っていたようだ。
そりゃあもうとんでもない風力だ。
帽子を飛ばされないよう外し、ストラップを手に通す。
前の選手が、脱いだカッパをポーチに縛り付けていたが、そのカッパが風になびいて完全に真横を向いている。
下手な台風なんかを凌ぐ暴風。
そして橋を折り返して、それが逆風になったときには・・・もうなんだかわけもわからず、笑えてくるくらいw
ちょっとだけ速度をあげて、すぐ前の選手に追いつき、後ろに張り付いて風よけになってもらう。
その選手が失速して自分が単独になると、いつの間にか自分の後ろにも誰かくっついてる。
まるで自転車レース!
伊良部大橋での爆風は覚悟していたので、ここまでに少しずつ少しずつ、予定ペースよりも40秒ほどの貯金を作っておいた。
それを使いながら・・・橋を渡り終えて、予定ペースより2分くらいの遅れ。
ん??意外といいペース!?これはサブ10イケるか??
タイムだけ見ればね、立派なもんだ。
あの暴風でペース維持して無傷はわけはないのに。
ドラクエ風に表現すると
ほら!あと70kmくらいあるのに、筋力ヤバイぢゃん!
ちなみにこのゲームに回復魔法はありませんw
とはいえこの時点では、目標にしてるサブ10も、打倒クロ選手も全然実現可能と思ってるわけで。
キープしてきたペースを落とすわけもなく。
ここから池間大橋までは、逆風も激しい登りもないし、6分弱のペースをキープできれば、体力も徐々に回復するはず!
さて、想定通り穏やかだった区間が終わり、池間大橋へ。
ここを渡り終えれば、50km地点間近!
でも、想像したとおりの爆風。
坂が緩い分、距離が短い分、伊良部より若干マシか??
そして、この池間大橋からの折り返し区間、ほぼ全選手とすれ違うポイントでもある。
つまり、ライバルとの距離を自分の目で確認できるのだ。
折り返してすぐに、クロ選手!
距離は200mくらいだろうか。
もしかしたら前にいるかもしれないと思っていたが、僕が先行していたらしい。
そしてその少し後に、ノダ選手!
思ったより速く来ているが、彼は例年、前半突っ込んで後半で失速しているから、これ以上詰まることもあるまい。
よしよし、少しテンション上がってきたぞ~
テンションは上がっても、例の爆風でごっそり筋力は持っていかれてますw
50kmを目前に、だんだんペースが落ちてきた。
その気になれば維持はできる。そりゃできるさ。
でも、ラクに維持できない。
ここらへんじゃ、まだ鼻歌交じりで鼻くそほじくりながら維持できなきゃ先がない。
だんだん危機感が膨らんで、やむを得ずペースよりも体力をキープすることにした。
そしてたいして進まないうちに・・・キタ!!
クロ選手!!
しかも余裕!
「おー、サトシ、いいペースだねー!がんばろう!」
くっ、しかも爽やかだ!!
ついて行こうと思うが、だんだん小さくなる背中・・・
まぁ仕方ない、先は長い。潰れなきゃまだ大丈夫。
それに、すぐに追いつく作戦もあるし。
レース中間地点(今大会では48km地点だが)にはビッグエイドがあり、炊き出しや着替えができる。
クロ選手も案の定、一休みしているようだ。
僕はそこを止まらず通過!
最低でも3分、もしかしたら10分くらい先行できるかも知れない。
だがこのあたりで、レース序盤に感じた違和感が気のせいではないことを確信する。
おそらく、来間大橋の折り返しポイントを、運営側が間違えたのだろう。
今回のレースは102kmある!!
たかが2km、されど2km。
追加されたのは、いつもの2kmじゃない。
100~102km区間が追加されたのだ。
55km地点付近。
いよいよペースがキープできない感じになってきた。
明らかに失速。
去年だったら、一番楽しくて、ヒャッァハァァーーー!!みたいに駆け抜けた50~80km区間。
あの時は先行してた選手たちをゴボウ抜きだったが、今回は逆の立場。
ヤバイヤバイヤバイヤバイ、あと1本フルマラソンやらなきゃならんのに・・・
そして当然の成り行きとして・・・
あの人に抜かれますw
この瞬間、二つの目標が同時に崩壊したのを確信。
無念・・・
80kmからがウルトラの真骨頂だ!
とかいつも抜かしてるくせに、80kmまで維持するべき体力を60kmにも届かず使い切ってしまった。
メンタルもピンチだ。
ってかレベル低すぎだろw
クロ選手に抜かれてからは、2.5kmごとにあるエイドからエイドの各駅停車。
去年の100kmから守ってきた、歩かない誓いだけは通したが、エイドでは座り込む始末。
いつからか再び降り出した雨は、いよいよ強さを増してきた。
天気予報では午後から天気は悪化する一方だ。
ポーチからカッパを取り出してかぶる。
うん、まぁ悪くない。そんなに邪魔にはならなさそうだ。
失速してある程度時間が経つと、順位もあるべき場所に落ち着いてくる。
周囲も失速している選手が目立つようになってきた。
気づくと見慣れた後ろ姿ばかり。
走ったり、歩いたり、座ったり、
抜いたり抜かれたり。
時々目が合うとしゃべったりする。
どうしてもテンション低めな会話になるw
エイドで座り込んでいるところを、トライアスリートの西内プロの車が応援で通った。
「前田さーん!止まらないで!がんばって!塩取りながらね!」
奥さんが大きな声で声援を送ってくれた。
去年、西内プロの水泳講座が宮古島であったときに、飛び入りで混ぜてもらったのだが、こうして応援までしてもらえるなんてありがたいことだ。
恥ずかしい姿は見せたくないなぁ。
すでに恥ずかしい状態なんだけど。
(写真は西内プロの奥さん、マキさんからいただきました)
ふと見ると、西内プロたちは、僕のすぐ前を走っていた、フード付きの雨ガッパの男性も同様に応援している。
半透明のカッパをよく見ると、その下に着ているユニフォームは・・・
そうか、西内プロのスクール生なんだ!
なんだか妙に親近感を感じて、話しかけてみた。
年は上だが気さくな方で、お互いに天気の愚痴とかいいながら、しばらく併走した。
「宮古の冬はいつもこんなんですか??」
「いやいや、コレは異常ですよ!台風でもなきゃこんな雨は滅多にないです!」
「そうですよねー、地元の和歌山だったら台風でもコレよりましですからね」
ひとと話せると少し気が紛れる。
少しメンタルも回復する。
雨はいよいよ雷を伴う豪雨へ。
豪雨という表現では物足りない。
天の怒りか!?
雨量3mmの予報は気休めもいいところ、翌日の新聞によれば55mmを記録したとか。
コースの至る所に大きな池ができ、道を塞いでいる。
くるぶしから下が完全に水没するような場所も多数。
歩道は河となり、岩肌には見たこともない滝ができている。
ずぶ濡れの靴をなんども水たまりに沈める度に、つま先から体温が奪われる。
エイド間の各駅停車を続けていたが、それもムリになってきた。
止まると体温がどんどん下がるのだ。
身の危険を感じる。
走り続けられない上に止まれないならもう仕方ない。
歩くしかあるまい。
あー。もういや。
おうちにかえりたい。
あったかいふろにはいって、ふとんでねたい。
ふと、数日前に見た夢を思い出した。
自分は体力を使い切ることなくレースをリタイアして、ゴールするライバルたちを歯ぎしりしながら見ている夢・・・
4年前のリタイア、あのときの猛烈な悔しさが蘇ってきた。
どんなボロボロでもいい。時間内にゴールに体を運ぶだけでいい。
あと少しで東平安名崎・・・
あそこまでいけば・・・
残り23kmくらい?
そこから3kmくらいいくと岬の付け根まで戻ってきて、そうしたら残り10km台??
そこから先はアップダウンキツイけど、いつも練習で走ってるホーム・・・
そんなことを朦朧と考えている横に現れたのはノダ選手!
え!うそ!後方で僕と同じ状況になってるんじゃないわけ!?
「おおっ!前田さーん!追いついちゃった!調子はどう?僕はなんかもう絶好調だよ♪♪」
うおーー!負けたくない!!
不思議だ、まだこんな感情残ってたのかw
何かのスイッチが入ったらしく、動かなかった足が動き始めた!
ここまで7~8分/kmのペースだったのが、突然6分前半まで復活!!
今までは確かに動かなかった。
これがウルトラマラソン・・・毎回、人体の神秘を目撃するw
ノダ選手がエイドで補給をしているところを抜いて、走る、走る。
よーし、いいぞ、いいぞ、でも上げすぎるな-、最後まで持たせるんだ!!
だが、笑顔で絶好調宣言できる選手に、こんな画面中真っ赤な状態で太刀打ちできるものじゃない。
東平安名崎エリアの終わり、80km関門付近で再び抜き返された。
な・・・なんとかついていけないものだろうか!!
チーン。おわった。
おまえはおわった。
この先20km、棺桶二つ引きずって走りきれるとでも・・・?
80km関門にテントがあった。
見ると、2人ほどパイプイスに座っている選手がいる。
イ・・・イス!!テント・・・!
「スミマセン、ちょっと座ってもいいですか・・・?」
ボランティアさんに声をかけて、座らせてもらった。
右に座っている選手は焦点の定まらない目で地面を見ている。
年配のボランティアスタッフが、その選手の足をマッサージしている。
「まずいなぁ、痙攣がおきてる。救急車かなぁ」
あー。低体温症になりかかってるんだな・・・
明日は我が身だ。
テントで雨は防げても、体を乾かすことも温めることもできない。
行くか。止めるか。判断は早く・・・
いや??止める???そんな選択肢、いつのまにできたんだ???
もうタイムも順位もライバルもどうでもいい。
ゴールすればもういい。
幸い、時間だけは貯金がある。
半分以上歩いても、ゴールには間に合う。
よし、この先のアップダウン、登りは全部歩こう。
そう決めたら少しだけ気が楽になった。
とぼとぼ歩いていると、うちの娘たちが車から叫んできた。
「がんばれーー!!はしれーー!!」
あ・・・スンマセン、下りになったら走るんで。
うーん、カッコワリィなぁw
ま、いっか。カッコつけようにも、どうもならん。
82kmのエイドには温かいゆし豆腐とぜんざいが用意されていた。
ここで温かい食べ物!!
全然期待していなかった!!
これはうれしい・・・
温かいものが食べられる、なんて幸せ!!
50kmの部に参加しているエド選手夫妻もいた。
僕のゾンビ状態を見て、塩飴やら痙攣を抑える漢方薬やらをくれた。
さすが・・・走る薬箱ww
感謝。
さぁここからが地獄のアップダウンなのだが、登りを歩くと決めてしまえばどうってことない。
むしろ下りをラクに走れるから望むところ・・・
こういうの以外は。
どうやら溜め池があふれたらしい。
多くの選手が水の前で立ち止まり、ケータイで写真を撮ってから、諦めたようにバシャバシャと泥水に入っていく。
あははは・・・なんだこりゃ、こんなん見たことないわ。
水位はふくらはぎ、小柄な選手にとっては膝近くまで。
透明度ゼロの泥水なので、底には何が落ちていても見えない。
変なものを踏んで転んだりしたら、目も当てられない。
雨期のジャングルを行軍する兵士か??
ピラニアとかいないだろーね??
残り10kmを切った。
ラン&ウォークで、平均ペースは10分/kmといったところか。
イケるイケる・・・
これを続ければいいんだ。
再び娘たちの声がした。
「がんばれーー!!ゴールで待ってるよーー!!!」
おう、待ってろ。ちゃんと生きてたどり着くからなー!
ラスト1kmの看板が見えた。
あ・・・もしかしたら、1km走れるかもしれない。
最後くらい、走ってゴールしたい・・・
突然そんな気分になって、走り出した。
おや??膝の裏あたりに、なんか使えそうな筋肉が残ってるぞ??
変な走り方だけど、今更失うものはない、使ってみよう。
なんと、「変な走り方」でペースが6分台前半に。
これもまたウルトラでは時々ある。
体力の限界を超えたときの発見。
「あれ?スイカの白いとこって、意外と食える?」みたいなw
最後の1km、10人くらいの選手を抜いて・・・
おわった・・・
あ・・・あんなとこにパイプイスが!!
「イス・・・イス・・・あたしんだよぉ~~」
(イメージです)
とにかく生還した。
このあとで悔しさがこみ上げて来たりもするだろうけど、まぁいいや。
生きてればまた挑戦できる。
成績は
226位(エントリー数760)
12時間53分
後ろにはまだ大勢の選手がいるが、実際、完走は際どかった。
次につながる経験、気づいていなかった問題点。
一筋縄ではいかないこの競技。
まだまだ当分飽きずに楽しめそうだ。
すでに十分長くなってしまったので、反省やら次の目標やら、ライバルたちがどうなったかは別の機会に。
special thanks to…
僕が走っている間、娘たちの面倒を見て、ゴールではゾンビ(老婆?)になった僕の面倒を見て、会場から僕の車を家まで運んでくれた植松夫妻と子供たち。
yomeと我が娘たち。
豪雨の中でもエイドを運営してくれたボランティアのみなさん。
コースのあちこちで応援してくれた、友人のみなさん。
苦楽をともにしたライバルと選手のみなさん。
こんなダラダラした長文を最後まで読んでくれたみなさんw
ありがとうございました。
お疲れ様です。
足が治ったらまた走ります。
【追記】
後日の新聞記事より。
100kmの部:
参加者707人
完走427人
完走率60.4%(大会史上最低?)
天候:
◇大雨洪水警報発令
◇1時間あたりの降水量が、1月の観測史上最大
◇一日の降水量は93~108mm(観測地点によってかなりの差)
◇最大風速15m、最大瞬間風速20m(下地島空港)
他:
100kmの部で誘導ミスがあり、実際より約1.8km長く距離が取られた。
(1位の選手が誘導に気づかず、折り返しを通過してしまったため、やむを得なかったらしい)
そのため関門の制限時間を20分延長した。
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