ども。sassyです。毎度の定番ですが、シーズン開幕戦の模様をレースレポートで。

 朝5時半に起床。9時スタートなので、気持ちとカラダを十分に目覚めさせておくため、早めの起床だ。今回は長女も5kmの部で走るので、張り切って早起き。おかげでこっちもやりやすい。しかし今回は睡眠に異常が。。。なんと、前夜に眠れたのだ。10年ほどマラソンをやってきて、レース前夜に眠れた試しはほとんどない。もうそういうものだと割り切っていた。これは吉兆か、凶兆か・・・。

 朝食を取って、荷物の最終チェックをしながらも、なかなか目が覚めてこない。アドレナリンが出てないというか。そして、まさかの二度寝。どうにもこうにも、頭の芯が痺れたように眠くて、椅子に座ったまま30分ほどうとうとしてしまった。これはヤバい。すでに思い当たるフシはあるのだが・・・それは長くなるので別の機会に書こうと思う。

 なんだかふわふわした気分のまま、会場入り。自宅で済ませてくるはずだった、筋膜リリースなどもすっぽかしてしまった。雨のパラパラする、どんよりした空。例年の酷暑にくらべれば、環境はマシだ。
とにかく、ここまできたらあとは走るだけ。今回のテーマは自己ベストではなく「強くあること」。そういう意味では、逆境でも問題ない。

 予定通り9時に号砲、今回は暴走しないために、少し後ろにスタート位置を取った。が、それもよくなかったらしい。前列以外がこんなにもスロースタートだとは!渋滞をすり抜けるのは案外疲れる。とにかく最初の10kmを重視して、おそすぎない程度に慎重なペースを刻む。去年はここで 暴走して、ほんの15kmでペチャンコになってしまった。自分のカラダと向き合いながら、適正ペースを慎重に選択していく。

 数キロ先で、「石仏」けんけん堂とすれ違う。なんだかテンション低めだ(彼は先週から2連戦)。前半で僕が先行するのはお決まりのパターンなので、いくらか言葉をかわしてサヨナラ。レース中にもう一度出会うときは、きっと死神として現れるに違いない。例年、気温が28度を記録するこの大会。経験者たちはわりと慎重に走り出しているようだ。

 5kmほど走ったところで、ふと頭に「残り37kmか・・・」という思考が浮かぶ。そして次の瞬間、「ああ。このレース、敗戦処理になるな」という確信に近い思いに至る。ペースは悪くないし、無理もしていない、当然苦しくもない。それなのに、序盤で残り距離の計算するなんて、 なにかとても悪いことが始まっているに違いない。

 速くもないが特別遅くもない、苦しくはないが、ラクでもない、もやもやとした感じで20kmほど走ったあたりで、いよいよ身体に異変を感じ始めた。
(あ。。コレ、ガス欠じゃん)
レース1週間前から、食生活の「ある実験」をしていたのだが、それが仇となったようだ。もちろん、リスクは覚悟した上で、勝負レースに向けての情報収集としてのことだったが、ここまで露骨に悪くなるとは思っていなかった。
脚も呼吸もまだ余裕がある。それなのに、身体に力が入らない。普段は、補給食を摂れば、全身にエネルギーが満ちていく感触があるのだが、今回はそれもない。気づけばすでに、キロラップで20秒は失速している。

 最後の折返し付近で、一気に天候が崩れ、土砂降りに。目を開けているのが辛い。雨自体は別にどうということはない。涼しくなるし、ウルトラマラソンと違って、短期決戦のフルマラソンでは、自律神経の消耗を気にしなくていい。ただひとつ。後方で、あの石仏が大喜びしている姿が脳裏に浮かぶ。悪天候で本領を発揮する彼のことだ。今頃、水を得た魚のようにテンションを上げていることだろう。逆にこっちはお先真っ暗。逃げ切れるのか???

 30kmのあたりで、ついに歩いた。もちろん、頭の中でなんども計算していた。石仏との差が1kmとして、歩いたら10分、止まったら5分くらいで追いつかれるだろうか。とにかく脚を止めるな、と。しかし、絶望感で精神的に参ってしまった。
(なぜこんな体調で走らなきゃならない??)
(いや、ここでたとえ歩いても、なんとか立て直して、レースをまとめるのだ・・・)
(まとめるったって、キロ7分とかで走り出して、まとめたことになるのか??)

 そしてほぼ予定通り、死神が来てしまった。いやー、計算力高いな、自分w
フラフラで走っている僕の横に石仏が並んだ。
「いやー、追いついちゃったね☆」
ああ、ついにきたか。
反射的に出た回答は
「あー、俺はダメダメだー、先に行ってくれよ」
というところだった。
普段無表情な石仏がニヤリとしたのが見えた。

 さて、彼が僕の脇をすり抜けた直後、何かが変わったようだ。
ライバルに弱音を吐いて、憑き物が落ちたのかもしれない。
(うん?ホントにこれでいいのか??)

—-その間約0.5秒—–

緊急自分総会招集。

自分A「おいおいおい、このパターン、あとで悔しくてゲロ吐くやつだろ!なんとかしろよ」
自分B「んなこと言ってもよ、全部売り切れだよ、うちの商品は。脚も、スタミナも、気力も!!」
自分C「それは違うんじゃないか?売り切れたのは燃料だけだろ。もう一度システム総チェックしろよ」

・・・・・代謝系システム以外、ハードウェアに異常無し!
・・・・・メンタルシステムにエラー!再起動を行います!
・・・・・メンタル再起動、過去30km分のメモリーを凍結アーカイブの後、表層意識から削除します!

全会一致「よっしゃ、ダメ元で追撃するぞ、これ以上失うものはない!!」

—-その間約3秒—–

残り10km、ここからだ!
絶好調で走り出したとしても、30km以降は例外なく苦しい!つまり、いつもどおりだ!燃料なんかいらん。身体を燃やして走る!

 幸い、石仏の背中はまだ1mしか離れていない。嫌がらせでもあおり運転でもいいから、へばりついてやる。ラスト2kmまでくっつけば、スパートの脚力では負ける気がしない!

 彼にくっついたために、キロ1分ほどペースを上げたことになる。が、案外平気だ。うむ。やはり終盤は気持ちだな。この勝負、勝ちたい気持ちが強いほうが制するのだ!
しばらくして、石仏はエイドで減速して給水に入った。思ったよりもしっかり減速したので少し驚いたが、僕は走りながらの給水で再び前に立つことに。
もしかしたら、後ろに付かれるのを嫌ったのかもしれないが、それならそれでよし。再び抜かれたときにまた張り付いてやるだけだ。残りの距離が短くなるほど、条件は有利になる。

 残りは5kmほどになり、急な下り坂へ。最近、下り坂は大好きだ。体力をセーブしながら、大いに速度を稼げる。フラフラで走っていたはずが、まるで空を舞う気分だ。
ふと、「自分は鳥だ」という思考がよぎる。
石仏は獣。鳥の羽根が折れれば、地上では無力だ。だが、鳥が飛び続ける限りは、獣に追いつかれることはない。

♪♪ああ、人は、昔々・・・鳥だったのかもしれないね・・・こんなにもこんなにも、空が恋しい(中島みゆき)

 ああ、いい感じに意識も混濁してきた。あとは飛び続けるか、墜落するか、ただそれがあるだけだ。
その間も、前方で失速した選手たちをひとりひとりと拾って順位を上げていくが、どうせ石仏は同じように上がって来ているだろう。
安全圏に入ったと思ったら、多分負ける。少なくともトラック(ラスト300m)までは!!

 残り1kmあたり、コースが左折するタイミングで後方に目をやった。やはりいる。が、目測で100~150mは離したか。時間にすると少なく見積もって30秒。1kmのロングスパートで30秒詰める体力を残しているなら、ここまで開く前に、もっと早い段階ですぐ後ろに詰めてきていたはず。
おそらくはほぼ安全圏。だが、ここでダメ押しだ。こちらがここで10秒上げれば、もうついてくることはあるまい。そうだ。強さを示すのだ!!!

 フィニッシュタイムは3時間45分。
去年リタイアした同大会を除いて、この2年でワースト記録。
速さの面では完全に落第だが、第一テーマに挙げた「強くあれ」には合格だ。
ありがとう、石仏(拝)
ひとりだったら4時間オーバーしてたかもしれない。

 それにしてもこのレースは難しい。
開幕戦で酷暑。
今まで6回くらい走って、うまく行ったのは一度だけ。
次出るなら、甘く見ないでちゃんと対策しなきゃなぁ。

 さて、次は2週間後のたらま島一周マラソン(23km)、その2週間後に、シーズン前半の勝負レース、那覇マラソン(フル)!
一年で一番楽しい季節が始まるぞ♪

またレポートします☆

※写真は石仏けんけん堂の奥様からいただきました。ありがとうございます。