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TOFR 2017 3rd stage

2nd stage はこちら

スマホのアラームで夢が中断された。
覚えていないが、気持ちのいい夢だった。
ぼんやりとスマホの画面を眺めると、時刻は4時半。
それですべて思い出した。
自分がこれから戦場に出なければならないことを。
うらめしい気分にはなったが、昨日のようにスタートを迷いはしない。
きっとゴールしてやる。

今日はチェックアウトなので、部屋を散らかして出かけるわけにはいかない。
今日使うものを選び、パッキングし、走る準備を整える。
スタートのムードは昨日と変わらない。
致命的な体調不良で棄権する選手が数名。
多くは辛いね-、痛いねーと話しながらもどこか楽しそう。
ノダ氏は「ヒザが真っ直ぐに伸びなくなっちゃった」と言いながらも走る気満々だ。
「作戦なんて無いよ-、いけるとこまでいくだけさ。半分まで行けないとは思うけど」
まぁ僕も同じだな。
でも最後まで行きたい。

昨日に比べれば体調はずっとよかったが、例の貧血のような症状が怖かったので、ゆっくりゆっくり走り始めた。
やはり、走り出すとすぐに息苦しくなる。
そして次は腹筋が痛い。
痙攣まではしないが、地味に、ねちねちとくる、嫌な痛み。
フォームを整え、腹式呼吸を意識して、少しでも痛みの少ない走り方を探しながらゆっくり進む。

10kmほど進んだ。
往路ではあれほど長かった名護浦湾もすぐに通り過ぎた。
ほんとに人間の体感時間というのは実際の時間とは違うようだ。
今日の距離は68km。
もう1/7も来た!
国道の青看板はすでに「那覇58km」などと言っている。
行けるかも知れない!

だが結局、次の10kmで心も体も折れてしまった。
息が続かない。
いよいよ足が痛い。
やはり3日目となると、少々体調が回復しても、蓄積した疲労が膨大なのか。
このステージをゴールするためには、キロ8.5分くらいがリミットだ。
序盤で多少の貯金があるが、それもほぼ使い切った。
ここから先、キッチリ8.5分ペースで行けるはずはない。
なにしろ今のペースはキロ12分。
それもさらに落ちそうだ。

後ろから、のんびりペースのおじさんが近づいてきて、笑顔で話しかけてきた。
どうやらこのレースを完走した経験もあるらしい。
だが、昨日の2nd stageは完走できず、今日もこのペースなら投げてるに違いない。
そしてなんと、僕と同じ高校を卒業しているようだ。
15年上のセンパイにこんなところで、こんな風に出会うとは!
何にせよ、歩きのお供がいるのはありがたいことだ。
他に歩きの選手が何人かいたが、歩くペースが速く、僕らよりずいぶん先に行ってしまい、そのうち見えなくなってしまった。
センパイは相変わらず僕に合わせているのか、ずっと横にいる。

果てしなく長く思えた歩きの道のり。
コースの半分、34km地点のエイドが見えた。
心身共に限界だ。
今日のゴールはここだな。
最後までいけなかったなぁ。
ノダ氏の姿が見えないってことは、彼は先に進んだんだろうな・・・

僕がアスファルトに座り込んで、スポーツドリンクを片手に打ちのめされているとき、
センパイは軽食を食べながら、オレンジのパーカーを着たエイドのおばさんと楽しそうにしゃべっていた。
それまで何を話していたか聞いていなかったが、突然センパイがおかしなことを言い始めた。
「あれー?ここからキロ6分で走ればさ、ゴールできるはずだよね!?それってカッコよくない!???」
「はいはい、そりゃカッコイイけど、今でも十分カッコイイよ!」
エイドのおばさんも、またこの人はテキトーなことを・・・みたいな感じで受け流している。
はは、、、それができれば苦労しませんよ。
できないから今まで12分ペースで歩いてきたんでしょ。
残り34キロで、制限時間は4時間弱。
半分来るのに6時間かかったところを、疲労を抱えた残り半分を4時間で!
でもまぁそれを口にしただけでもすごい勇気だね。

「よし決めた!俺、やっちゃうよ!」
センパイはリュックサックをおばさんに、よろしく、といって渡すと、颯爽と走り去っていった。
明らかにゴールするつもりの走りだ。
僕はしばらくあっけにとられてその後ろ姿を見ていたが、すぐに見えなくなった。
センパイ・・・マジかよ・・・ここで座り込んでる自分は何て滑稽なんだ・・・
おばさんがクリームパンを持ってきてくれた。
「大丈夫?車に乗る?」
・・・
「わかりません、ちょっと休んで、食べてからもう一度考えますね」
クリームパンを食べて脳に糖が回ったのか、意識がはっきりしてきた。
同時に、自分の中で何かが切れた。
「僕も行きます。あの、これ頼んでもいいですか?」
僕はおばさんにリュックを渡した。
厳密には、荷物をエイドで預けるのはNGだろう。
だがすでに二日目にリタイアして順位の残らない僕には構うまい。
リュックには、お金、飲み物、雨具、スマホ、地図が入っている。
どれも必需品だ。
僕は500円玉を一つだけスパッツに押し込んで走り出した。
もうトボトボ行くのはヤメだ。
どうせリタイアするなら、燃え尽きてやる。
次のエイドまで7km、普段なら完全無補給で当たり前、500円あれば十分!!
例え行き倒れても、ここは国道、人知れず死ぬことはない!

まったく人間の精神は神秘的だ。
ペースは6分半!
ギリギリゴールに間に合うペースだ。
先行していた歩きの選手たちが、びっくりしている。
「大丈夫なの!?」
「もうヤケクソなんですよ!!死ぬつもりで行くことにしました!!」
あっという間に7kmを走りきり、次のエイドにたどり着いた。
足がガクガクして、心臓が口から出てきそうだ。
道の駅の石のベンチに腰を下ろすと、エイドスタッフが炊きだしの沖縄そばを出してくれた。
これはありがたい。
飲み物コーナーにはお茶やスポーツドリンクに混ざって、ビールが冷えている。
そうだ、ここは往路で初めてビールを飲む選手を見て驚いたエイドだ・・・
「よかったらビールもあるからね」
エイドスタッフがニヤニヤしながら言った。
「一本ください!」
もうとっくにヤケクソなのだ。
アルコールにには沈痛作用がある。
もちろん、スポーツには危険な多数の副作用と一緒に。
だが今、そんな常識や良識がなんだろう。

そばを食べ、ビールとお茶を飲み干すと、また走り出した。
次のエイドは17.5km先だ。
無理だ。
でも先の7kmで自分は燃え尽きなかった。
だからまだ進むのだ。
9km走ったらコンビニでこの500円を使って補給をして、エイドまで持たせるのだ。

走り続け、だんだんペースも落ち、6分台は保てなくなった。
もうゴールは無理だろう。
だが・・・・・何て気持ちいいんだ!!
自分にこんな力があったなんて、本当に知らなかった!!
まるで生まれ変わったようだ!!
きっと、これが超ウルトラの世界!
ここの選手たちの生きる世界!
身体は辛くても、笑いがこみ上げてくるようだ。
センパイ、ありがとう。
貴方は最高の置き土産をくれました。

6kmほど走ったところで、喉の渇きがきつくなってきて、コンビニに入った。
スポーツドリンクとサンドイッチを食べ、また走り出す。
残り170円。
11km持たせなければ。
空は晴れ、太陽が照りつける。
3月の沖縄は、日が出ればかなりの暑さになる。
そんな状況すら、なんだかおもしろおかしく思える。

さらに6kmほど走り、自販機で最後の飲み物を買う。
残り10円だ。
のんびり歩いていたら干からびる。
いよいよ身体は動かなくなってくるが、先の「大復活」の経験が勇気をくれる。
信号で止まるときは、日陰を見つけて座り込む。
だが信号が青になれば立ち上がり、横断歩道でスイッチを入れる。
「ワン、ツー、スリー、それっ!!!」
体重を前に乗せ、腕だけ振り出せば、足が動き出す。
身体を信じているから、動き出せる。
すごい、まだ動くんだ、こんなになっても、まだ動くんだ!

そしてついに、17.5kmをワンコインで走り抜き、エイドに到着した。
最終制限時間まで残り20分。
残りの距離は約10km。
3rd stage、完走はできなかったなぁ。
でも気分は最高だ。
最高の経験だった。
きっと次は完走できる。
壁の向こうは見えた。
というか、最初から壁なんてあったのか?

ノダ氏は完走したらしい。
しかも8位、上位に食い込んだ。
恐るべきガッツだ。
センパイも時間内に完走したらしい。
センパイ、貴方は変な人ですが、僕のヒーローです。

こうして大会は幕を下ろし、選手たちは傷ついた身体を引きずって、静かに帰路へ・・・付くはずもなく。
シャワーを浴びたら、向かう先は打ち上げ会場。
貸切の居酒屋で、飲んで食って大騒ぎ。
お店は厨房が追いつかず、ビールサーバーはノンストップ。
挙げ句、退店後は
「シメのステーキ食べに行く人はこっちねーー!」と・・・
最後の最後まで、僕らの常識をひっくり返してくれました。

素晴らしい出会いと素晴らしい経験をありがとう。
また来年、変態レースで会いましょう。
もっと強くなって、また会いましょう。
ありがとう、ありがとう。


TOFR 2017 2nd stage

1st stage はこちら

4時50分にスマホのアラームが鳴った。
明け方(今も明け方だが)に少し眠れたような気がする。
汗が噴き出したかと思えば突然冷えてきたり、寝返りを打つ度に変なところが痛んだり。
だがとにかく時間だ。
1時間ほどでレースが始まる。
今日の完走はあり得ないだろう。
それでも走り出すのか。
それとも修羅場のことは忘れて、この温かいベッドで今度こそゆっくりと心ゆくまで眠るのか。

・・・決められない。
情けないが、少しでも決断を保留しながら、それでもできる準備はしてみる。
昨日買ったおにぎり、オレンジジュース。
見るだけで吐き気がする。
水は飲めた。
シューズはグショグショだが、予備を用意してある。
昨日の終盤激痛だった股擦れは、寝る前に軟膏を塗ったおかげか、だいぶよくなっている。
足の小指が水ぶくれになっているが、筋肉はおおよそ無事なようだ。
死ぬかと思った動悸と息切れは、とりあえず落ち着いている。
うむ、今致命的なのは、胃か。

いつの間にか、走る準備が整っていた。
ああ。うらめしい。
結局走るのか。
集中治療室のドアを開けたら戦場・・・なんてね・・・

ホテルの前に集まった選手たちは、何かしらの体調不良を訴えながらも、おおよそ笑顔だった。
昨日お腹を壊した選手は、今日は棄権するが明日は走るつもりらしい。
熱中症やら血尿やらを昨日経験した選手もいるようだ。
ノダ氏は傷めているヒザがやはり辛いようだ。
ふふ。なんとかスタートラインに立ててよかった。
そうでなければこの先しばらく、ノダ氏に負い目を感じるところだ。

6時、スタート。
やはりトップレベルの選手を除けば、歩き出すようなスタート。
僕は真っ直ぐ例のコンビニに入ったので、完全に最後尾スタートになった。
買いたかったのはスポーツドリンクとソルマック。
二日酔いのときに飲む、小瓶に入ったアレだ。
症状がほぼ同じだから効くはずだ。

700m走って、300m歩く。
走るといっても、生気無くズルズルと移動しているような感じだ。
700m走って、300m歩く。
それでも何人かの選手を抜いた。
苦しいのは自分だけではない。
7.4kmに最初エイドがあった。
すでに何十キロも走った気分だ。
ノダ氏が何か食べている。
彼も今日は完走できるとは思っていないようで、それでもいけるところまで行くつもりようようだ。
僕もエイドのスタッフに軽食を勧められたが、お断りした。
まだ食べ物をみると吐き気がする。
ふらーふらーと先の見えぬ道へ出発する。

いつの間にか、700m走ることはできなくなった。
例の息切れが戻ってきた。
頭の中がぼーっとして、視界に薄い霧がかかったようだ。
酸欠だろうか?低血糖だろうか?
先に抜いた選手たちが再び僕を抜いていった。
最初から歩き通す作戦だったようだ。
ああ。なるほど。その方が早かったりするんだ・・・
小雨を避けてバス停の屋根の下で寝転んだ。
灰色の空を見上げて、自分は何をやってるんだろうとぼんやり考える。
ああ、わからん。
人生って何なんだろう。
倒れるためだけに歩き続けるのか・・・

何がしたいのかもよくわからないまま再び立ち上がり、とぼとぼ歩く。
オキヤマさんがマイクロバスで近づいてきて、僕の横で減速した。
「マエダさーん、大丈夫?乗っていくかい?」
僕のことは昨日の一件ですっかり覚えてもらったらしいw
「え・・?ああ、大丈夫です。まだいけます」
おいおい、何言ってんだよ、おれ・・・
ここは乗るとこだろーが・・・
「オッケー、じゃあ次のエイドで待ってるから!がんばって!」
ああ・・行ってしまったじゃないか。。。

もう折り返しの辺戸岬にも到着することはないだろう。
いったい自分の今日のゴールはどこなんだ?
どうがんばっても・・・あと10キロか20キロじゃないか?
それまでに回収バスに収容されるはずだろう??
そうか、あと10キロか20キロでゴールなのか。
目標が見えてきた。
回収されるまでがんばろう。

コンビニで初めて食料を買った。
胃薬が効いてきたのか、少し食欲も出てきた。
こういうときは、理屈ではなく、見たときに食欲を感じるものを選ぶことにしている。
本能を信じるというか。
(昨日そうやってカレーを選んだのはかなり微妙だったが)
レンジで作るお茶漬け。
これが旨かった。
久しぶりの食料が身体に染みる。
さあ、歩こう!終わりが来るまで!

次のエイドまで残り2kmぐらいだった。
オキヤマさんが再びマイクロバスで通りかかった。
「マエダさーん、大丈夫~?」
「はい、大丈夫です!とりあえず次のエイドまで行きます!」
「オッケー、じゃあそこで今日は終わりにしようね!だいぶ時間も過ぎてるから」
「わかりました、じゃあエイドで!」

ああ、救われた。
少なくとも僕は自分から投げ出さなかった。

マイクロバスはまっすぐホテルに向かった。
乗っているのは僕だけ。
例の歩き通す作戦の選手たちは、あのエイドからさらに先に進んだようだ。
かなわんなぁ。
道中、オキヤマさんの話をいろいろ聞いたが、ホントにスゴイ選手だ。
もちろん、今回は運営者なのでサポートに徹しているが、それも元々、走ることが死ぬほど好きで、それをみんなと共有したくて企画を始めたらしい。
だから大会の利益もゼロだ。
人としても選手としても、まったく尊敬する。

ホテルに戻り、ゆっくり風呂に入り、コンビニの軽食と、買い足したソルマックを飲む。
夕食はしっかり食べられそうだ。
明日は完走するぞ・・・

そのまま寝落ちしたらしい。
気づいたら何時間か経っていた。
ノダ氏も、僕より10kmくらい先で回収されたらしい。
久しぶりにマトモなものを食べよう、と外食に出た。
語り合うことはだいたい、この大会の選手たちのレベルの高さだ。
60代の選手もいる。
見た目フツーのおばちゃんなんかもいる。
だがそのメンタリティは鋼のようだ。
尖ってはいない。
人を威圧したりもしない。
ただただ、芯が強い。
2人とも二日目にして完走は消えてしまったが、リベンジを誓った。
自分たちの知っていた世界は狭かった。
この選手たちと同じ世界で、もっと自分を試してみたい!

ホテルで洗濯を済ませ、翌日の準備(もうチェックアウトなのだ)を整え、早めにベッドに入った。
レースの前日はたっぷり休めるのが当たり前だと思っていた。
「早めに寝る」がこれほどありがたいことだったとは!!

3rd stage へ


TOFR 2017 1st stage

ども。お久しぶりです。
約1年ぶりにこのブログを解凍する気になりましたww

TOFR(trans Okinawa foot race : 沖縄一周マラソン)、超楽しかったです。
これまで100kmまでしか・・・そう、終わってしまえば、ホントに「しか」と思うわけですが、100kmまでの大会とは完全に別の世界です。
これは何を言っても何を書いても、その場にいなければ伝わらないことなのですが、それでも少し書いてみたいと思います。

レース概要:
3日間に渡るステージ制レース。
1日毎にゴールと制限時間が設けられており、完走できないステージがあっても、続きを走ることができる。

1st stage 那覇~喜屋武岬(きゃんみさき)~名護 約104km 16時間
2nd stage 名護~辺戸岬(へどみさき)~名護 約98km 16時間
3rd stage 名護~那覇 約68km 10時間

エイドステーションは「少しだけある」
間隔にばらつきがあるが、10kmに一個あるかないか、という感じ。
エイドに頼ろうという選手はまずいないが、あれば確かに助かる。
基本的にはコンビニ補給。

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5:00am
スタート会場のホテルで受け付け、競技説明。
これから3日間のサバイバル、戦場に向かう兵士よろしく張り詰めた空気・・・なんてことは全然なく、まるで同窓会のような雰囲気。
初参加の選手は僕らを含めてほんの数人、だいたい顔見知りらしい。
マニアックな競技だし、狭い世界なんだろう。
落語家さんがルートの注意点など話しているのだが、100km以上のコースを口頭で説明されてもちんぷんかんぷんだ。
わかったことは、序盤、喜屋武岬までの約18kmは、道に迷いやすいから、他の選手について行け、ってことか。
地図も配られたが、多分スマホのほうが役に立つだろう。

6:00am
那覇の市街地の真ん中で、50人の選手が一斉にスタート。
選手たちはみんな県外からの遠征、僕とライバルのノダ氏だけが県内(離島だけど)。
だから家族の応援も少ない。
静かなスタートだ。
トップレベルの選手たち以外は、だいたいゆっくりな走り出し。
ちょっとそこまでジョギングに~~みたいな雰囲気。
走り出すとすぐに空が白み始めて、車がビュンビュン通り過ぎる国道沿いを一路南へ。

さて、書きたいことはいろいろあるけれど、何せ先が長いので、端折っていきます。
時刻もあまり重要でないので、飛ばします。

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約18km地点、喜屋武岬に到着。
沖縄本島最南端。
順位は半分より少し上だろうか。
僕もかなり遅く遅くと意識しながら走っているが、それ以上にのんびりな選手が多い。
なにしろ先が長い。
初日は前哨戦、二日目以降を考えると、時間をめいっぱい使ってもいいから、無傷でゴールしたいのだ。
・・・が、若干体調が気になる。
おおよそは普段通りなのだが、少し・・・ほんの少し、息苦しいように感じるのだ。
なんか、薄いマスクを付けて走っているような。
まぁ気にしてもどうにもならぬ。
始まってしまった以上、走るのみ。
ここで折り返して、真っ直ぐ名護へ!

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そして帰ってきた那覇。
約36km。
なんか・・・意外と疲れたぞ。
先行き怪しいなぁ。
国道の青看板には「名護 65km」
見るな見るな、先を考えてはならぬ。

それにしても、那覇は信号が多い。
ただでさえゆっくり走っているのに、信号で止められていると若干焦る。
ここまでの平均ペースは、キロ8分くらい。
普段のジョギングで6分くらいだから、超スローペースだ。
平均ペースとしては構わないのだが、後半さらに失速したら・・とか少し心配になる。

まぁ初日は心身ともにフレッシュな状態でのウルトラマラソン。
翌日以降のプレッシャーを除けば、知っている世界だ。

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嘉手納に到着。
そろそろ半分来たくらいか。
前方を行くオレンジは、ライバルのノダ氏。
お互い、このレースでは唯一の知り合いなのだが、偶然ペースが一致したときしか併走しない。
僕もかなり個人主義で群れるのがイヤなタイプではあるが、彼はもっと際立っている。
併走してるときも、ポツリポツリと言葉を交わす程度。
というか、普段もあまり多くはしゃべらない。
それでもこんなマニアックな趣味を共有しているという連帯感は得がたいものだ。
ノダ氏はレース前からヒザが不調らしく、違和感を訴えていた。
が、「壊れたとしてもレースは走る!」とのこと。
世の競技者やドクターが聞いたら顔をしかめるだろうが、この超ウルトラとでもいうべき業界では、当たり前のメンタリティだということを、後に思い知ることになる。

62.8kmのエイド、道の駅喜名番所。
市街地を抜けて、だいぶ好きな雰囲気になってきた。
はぁ、一息つきましょ。
と何人もの選手がベンチに腰掛け、用意された軽食と・・・ビール飲んどる!!!??
しかもビールはエイドで用意したですと!???
わ・・・わけがわからん。
そんな大会あるのか!?
「それ何本目?」
「いやぁ、4本目だったかな?」
「佐渡(のウルトラ)で俺が飲んだ19本の記録を更新してよw」
何の自慢だ??
でも彼らは昨日今日マラソン始めた連中とはわけが違う。
百戦錬磨の超ウルトラランナーだ。
うむ。常識を改めるのはこちらの方かも知れない。

残りの距離が30kmを切ったあたりから、かなり苦しくなってくる。
おかしい。こんなところで苦戦していたら、明日以降ダメだぞ。
とは言え、苦しい現状は受け入れるしかない。
時々出会うノダ氏も苦しそうだ。
ヒザが、、ヒザが、、と言っているが、ずっと前からそうだった気もする。
コンビニでお気に入りのエナジードリンク「Monster 緑」を買う。
一瞬疲れや痛みが吹き飛ぶので、ウルトラ後半で愛用しているのだが、2本目以降は気持ちが悪くなるのが難点だ。
できれば80km以降まで残しておきたかった。

残り20km。
足は平気だ。
最近多かった、太ももの筋肉痛で足が上がらなくなる症状は出ていない。
だが、息が苦しい。
貧血だろうか。
そういえば最近、「お茶やコーヒーを減らしてレバーを食べる」のをサボってたな。
息が苦しいせいか、全身の倦怠感も足を鈍らせる。
制限時間には余裕がある。
一定のペースを保つため、2kmの内で300mを歩くという作戦を立てる。

残り10km。
300m歩いて700m走るのがやっと。
あたりはもう暗くなった。
ああ、完全にアカンパターンに嵌まってしまった。
何が悪かっただろう?
何が悪かったにしろ、済んでしまったことだが。
とにかくゴールせねば。

もうあと数kmで次のエイド・・というコンビニで休んでいたところ、後から苦しそうに歩いて来た選手がいた。
「次のエイドで・・・リタイヤしようと思うんです」
と。
「実は、数日前に高熱が出て、なんとか落ち着いたばかり、まだ微熱は続いてるんですよね・・・
ここまでだましだまし来たんですが、ついに内臓がおかしくなったみたいで、酷い腹痛が・・・」
だましだましで90km以上も走れますかね・・・
あまりに苦しそうなのでタクシーで次のエイドまで行ったらどうかと聞いてみた。
国道沿いなので、流しタクシーは探すまでもない。
「いえ・・・自分もウルトラランナーの端くれなので、コース上でタクシーに乗るのはさすがにちょっと・・・」
まったく恐れ入る。
足がフレッシュでも、腹痛を抱えて歩く数キロは地獄そのものだ。
僕の不調などいかほどのものだろう。
僕も吐くのを覚悟で4本目のエナジードリンクを流し込み名護浦湾へ。

この名護浦湾は、去年のNAGOURAマラソンでも走った。
同じようにコースの最終ルートで、90km以上走った後だった。
弧を描く海岸線、その海の遥か向こうに街の明かりが輝いている。
見えているが故に辛い道だ。
走れど歩けど、光は近づいてこない。
気持ちが悪い。
完全に胃をやられたらしい。
動悸が収まらず、歩いていても息がゼイゼイする。

残り5km
名護市街地を歩く。
ベテランのU選手と一緒になった。
彼も歩いているが、バテている様子はないので、作戦だろう。
僕を心配してくれたのか、ゴールまで一緒に歩こうと行ってくれる。
酷い体調でネガティブループに墜ちていくところだったので、まったく救われた。
そしてここでまさかのスコール。
急いでカッパを取り出したものの、過去なんどかウルトラで経験した低体温の恐怖が蘇る。
大丈夫、今回は残り距離が短い。
低体温になる前に終わるはず・・・

残りの距離はGPSのデータで予測していたよりも長かった。
U選手がいなかったら、ヤバかった。
ようやく今日のゴール兼宿泊先のスーパーホテルが見えた。
危なかった・・・でもなんとか初日リタイアは避けたな。
見ればホテルの脇にコンビニもある。
制限時間まであと20分くらいあるから、コンビニで夕食と朝食を買ってからゴールすることにした。
が、コレがまずかった。
コンビニの店内はなんと冷房ガンガン!
疲労困憊ズブ濡れの身体は一瞬で体温を失い、震えが止まらなくなってしまった。

ゴール自体は問題なかったものの、部屋に入ってからは恒例の低体温地獄。
低体温の恐ろしいところは、明らかに身の危険を感じるのに、身体がどんどん動かなくなっていくこと。
苦しくても、動ける内に身体を温める準備をしなければどうなることかわからない(死ぬのか?)
とにかくユニットのバスルームに入って、服を着たまま熱いシャワーをザブザブ浴び、その湯をそのままバスタブに溜める。
全身が湯に浸かるころ、死の恐怖は去った。
ああ、そうだ、服着たままだ・・・まずは靴下を脱ごう・・・
バスタブの中で左足に手を伸ばした瞬間、腹筋が痙攣した。
痛い!!腹をみると、腹筋にピンポン球みたいな塊ができてピクピクしている。
なんとか背中を反らせて痛みの引くポイントを見つけ・・・靴下に手を伸ばしてまた痙攣。
まったく滑稽なひとり遊びのようだ。
服を脱ぎ終わるのに何度これを繰り返したことか。

風呂を上がっても油断するとまたすぐに体温が下がるので、布団にくるまって横になる。
気持ちが悪い。呼吸が苦しい。動悸がする。
いや・・ホントに苦しい。死ぬのか??
きっと貧血がヒドイことになったんだ。血が黄色くなってるんじゃないのか。
酸素・・・酸素が足りない。
そうだ、運営に頼めば簡易酸素くらい貸してもらえるかもしれない。
ケータイに手を伸ばして、代表者のオキヤマさんにそれを伝えてみた。
「よし、すぐに買ってもっていってあげるから!」
ああ、わざわざ買ってまで・・・でも遠慮してる場合じゃないしなぁ・・・
あ、そうだ、YOMEにもいい方法がないか聞いてみよう。
看護職だからいいアドバイスくれるかもしれない。
LINEで相談したところ、「過呼吸じゃないの?」とのこと。
よくわからん。
酸欠なのか、過呼吸なのか、両方ってことはありうるのか??
だが酸素が届くまでの間、言われたとおりタオルを口に当ててゆっくり呼吸をしてみたところ、少し息が楽になってきた。
それからすぐにオキヤマさんが酸素を持ってきてくれた。
当然だが医療用ではなく、簡易的な薬局で買えるヤツだ。
早速それも試してみた。
あまり楽になった実感はなかったが、脇で見ていたオキヤマさんは「おお、すっと血の気が戻ったよ!さっきまで青白い顔してたからね!」と。
「また何かあったら電話してね。酸素はもう一本置いていくね」
言い残してオキヤマさんは出て行った。
まぁ・・・貧血なのか過呼吸なのかよくわからんけど、峠は越えたっぽい。
起き上がってコンビニで買ったカレーを一口食べてみたが、やはりダメだ。
胃が荒れて、スプーン二杯が限界だった。
その後、トイレで二回吐いた。

あと6時間ほどで、次の100kmに旅立たねばならない。
正気ではない。
だが、今日会った選手たち、彼らならどうするだろう。
前の夜に、明日は走らない、なんて言うだろうか。
そうか、スタートラインに立つ前に、すでにメンタリティで負けてたんだな。
これが超ウルトラの世界なのか・・・
まぁ明日のことは明日考えよう。
今は休むしかない・・・

2nd stage へ


第32回全日本トライアスロン宮古島大会 レースレポート

宮古最大のスポーツイベント、トライアスロン大会。
このレースの前に書こうかと思っていたネタがいくつかあったのだが、どれも「レース前でナーバスになってるから書きたいと思っただけじゃね??」と感じて自粛した。
寝付きも悪くなるし、レースに遅刻する夢を見る。
毎回毎回・・・メンタル弱すぎ??
いやいや、これはもう生理作用だろう。
そういう体質なんだ。
そんな自分も許してやろうじゃないか。

午前3時:起床

スタートは7時だが、ロングのトライアスロンはとにかく荷物が多い。
つまり、忘れ物リスクも高い。
スタート時刻に体調をベストに持って行くためには、朝食の時間なども意識しなければならない。
3時起きはむしろ遅い方かも。
冷蔵庫から個包装の切り餅を4つ取り出し、熱湯に放り込む。
包装を切っていないので持ち運びができ、一度柔らかくなると数時間は食べられる硬さのままなので、レース直前まで少しずつ食べられる。
4時ごろにYOMEを起こし、出発の準備。

午前5時:出発

YOMEに会場まで送ってもらう。
会場の前浜ビーチには、島中から1700人(家族やサポーターを含めるとその数倍)が集まりつつあるはずなのだが、田舎の我が家から会場に向かう車は皆無。
暗闇のドライブが緊張感を高め、全身に血がたぎるのを感じる。

やや遅めに入った会場では、すでにたくさんの選手たちが準備を進めている。
真剣に黙々とバイクを調整している選手、仲間と談笑しながら情報交換している選手、予期せぬトラブルや忘れ物に慌てている選手・・・
この空気感は独特。
いよいよ長い一日が始まる。

午前6時半ごろ:ビーチへ

腕にマジックでレースナンバーを書いてもらい、バイクのセッティング、荷物の割り振りを終えたら、いよいよビーチへ。
去年は海が荒れてスイム中止、デュアスロンの大会となったが、今年は無事にスイムも開催される模様。
スイムが中止にならないのは嬉しいのだが、3kmのスイムは未経験。
まして1700人の選手が一斉に泳ぐので、バトル(選手同士の接触がある混戦)は必至。
緊張が増してきたのか・・・なぜ歩きながらウェットスーツを着たのだろう。
(僕のはツーピースなので、上だけなら歩きながらでも着られる)
ピチピチのウェットをやっと装着したとき、耳栓を片方落としたことに気づく。
真っ白なビーチに、半透明の耳栓。
探せるはずがない。
早速きたか、最初のトラブル。
まぁいい、僕は右側でしか息継ぎしないから、右耳さえ塞いでおけば浸水はほぼ防げる。

スタートポジションのあたりまでくると、そりゃあもうぎゅうぎゅうの人だかり。
ボランティアさんが持っている看板に「エリート」とか「1時間以内完泳」とか書いてある。
なるほど、遅い選手は後方からスタートしてね、ってことか。
僕は1時間20分くらいかかると思うが、計測した経験がない。
友人のTKY選手としゃべりながら成り行きでたどり着いた場所が「1時間以内」より少し後ろだったので、その辺でいいや、ということに。

午前7時:レーススタート!!!

一斉に選手たちが駆け足で海に突っ込んでいく。
僕のが水に入った時にはすでに大勢が泳ぎ始めていた。
おお。
まるでイワシの群れ!
この中で泳ぐのか・・・
僕のスタートした、群れの中央あたり、インコース側ロープ寄り。
ここはもしかしたら最悪の激戦区?
もう遅い。
自分もイワシの一匹になって、あとは成り行きに任せるしかあるまい!

水に入って少し泳ぐと、すぐに足の付かない深さ。
今までの練習で身につけた動きを淡々と繰り返すのだが、手足が周りの選手に引っかかる。
左側からぶつかられて、右側のロープに押しつけられる。
ロープには一定の距離で、巨大なブイがついており、これに頭をぶつけるとかなり危険。
脇腹を蹴られたり、顔面パンチを食らったり、監視員のカヌーに頭をぶつけたりしながら、ようやくペースを掴めた。
周りの選手との距離感と、真っ直ぐ泳ぐことに集中するべし。
殴られたり蹴られたりするのは、多分お互い様。
スイムコースは三角形を描くように作られており、一周で3km。
3つの直線と2つの曲がり角がある。
1つめの曲がり角は思ったよりも早くやってきた。
泳ぎ方も掴めた。
ちゃんと水をキャッチできている感じ。
後ろから足を掴まれたら、心を鬼にしてバタ足。
そうしないとこっちが沈む。
接触はするが、パンチは食らわなくなってきた。
2つめの曲がり角を曲がったところで時計を見ると、まだ40分弱しか経っていない。
ん~?もしかして俺って速いのか??

息継ぎのときにふと後方に目をやると、水平線の上に奇妙なグラデーションが。
もう一度よく見ると・・・
雨雲だ。
宮古の夏によく見かける、天気予報に反映されない、激しい通り雨。
案の定、スイムフィニッシュを目前に、大粒の雨が叩きつけてきた。
雨の中ビーチに上がり、軽く駆け足しながらウェットを脱ぐ。
タイムは手元の時計で1時間と約6分。
上出来!
筋力もスタミナもメンタルもほぼ無傷でスイムフィニッシュ、しかも予想を大幅に上回るタイムだ。

ビーチを上がると、シャワーが用意されていて、そこでみんな海水を流す。
先は長いので、しっかり流したいところだが、混雑しているし時間がもったいない。
手早くシャワーを浴びて、ウェットやゴーグルなどを用意しておいたバッグに放り込み、裸足でバイクラックへ。
バイク用のシューズや道具は、一式バイクと一緒にセットしておいた。
バイクラックにはまだたくさんのバイクが残っており、悪くない順位でこれたことがわかる。
雨の中のバイクスタートは去年と同じ。
路面抵抗が下がり、スピードが上がる上にブレーキがききにくい。

バイク練習はここ2週間ほどしていない。
それに、去年の大会以降、150kmとかを走る練習もしていない。
練習はいつもだいたい100km。
僕の持論では、150kmをダラダラ走るより、100kmを全開で走る方がトレーニングとして有効だからだ。
150kmは時間もかかりすぎる。
100kmトレーニングの感じから2~3割アクセルを緩めてやれば、いい感じで157kmを走りきれるはず。

まずはバイクスタートの東急ホテルから、一路伊良部島へ。
去年の伊良部大橋は恐怖の横風で、車体ごと持っていかれそうだったが、今年はそれに比べれば無風みたいなもの。
途中、ライバルと目しているカッピ選手、SGR選手に出会う。
まだまだコースが混み合っているので、思い通りに進めないようだ。
実際、スピード感からして、今いるポジションは僕たちには少し後ろすぎるだろう。
無理な追い越しで事故でも起こしたら元も子もないので、慎重に少しずつ抜いて、ポジションを上げていく。
が、伊良部島に入ってしばらくのあたりで、タイヤから激しい異音!!
ヤバイ!何か巻き込んだか!こんな序盤でメカニックトラブルなんて!!
追突されないように速度を落とし、歩道に入って停車。
どうやら、車体に貼り付けていた補給用ジェルのガムテープが雨で溶けて、車輪に巻き込んだようだ。
幸いマシンに異常なし。
車体に貼り付けていたジェルは3つ、残りの2つも危なかったので、さっさと飲んでしまうことにした。
このときにサイコン(スピード計みたいなの)の位置が狂って、ケイデンス(ペダル回転数)表示が無効になってしまったが、レースにはそれほど重要でないと判断、微調整に時間を費やすより、無視してレース続行とした。
時間にして1~2分のロス。
だが、カッピ選手、SGR選手を見失うには十分。
2分あれば1km進むからね・・・

伊良部大橋を戻って、次に向かうは池間島。
・・・とりあえず好調。
スピードも出ているし、疲労感も少ない。
去年だったら「絶好調!」と思っていただろう。
「とりあえず」と思ってしまうのは、今シーズンのレースがことごとく後半に潰れているからか。
今年2回の100kmマラソン後半を思い出すと、いやな予感をぬぐいきれない。

池間大橋を渡って池間島を一周、再び橋を通って宮古島に戻る。
池間大橋復路では、後続の選手たちを見ることができる。
池間島が一周10km程度あるので、ここですれ違う選手たちは自分よりかなり後方と言っていい。
早速見つけたのは僕が応援しているKMT選手。
彼は昨年11月に伊良部トライアスロン(51.km)でデビューした選手で、フルマラソンも未経験。
普通に考えたら宮古島トライアスロンに挑戦するのは1年早い。
だが、物凄い勢いで練習を重ね、その結果としてやってくる故障にも腐らず、やれることをやれるだけやってきた。
相談された話やFBでの投稿を見ての感想だが。
ぜひ完走して欲しい。
人間その気になれば何でもできる、は僕のモットーだが、彼が完走してくれれば、またひとつその証明になるだろう。
そして続いて見たのは・・・
宮古の女王、アッツ選手!?
まさか、見間違い???
たしかにアッツ選手はバイクは平凡なタイム(女子としては平凡じゃない)で、ランに入ってから圧倒的な強さで駆け上がっていくタイプ。
にしても遅い?
もしかして俺が速くなった???
まぁいいや、アッツ選手も今回の目標の一人。
去年はバイクで先行したにも関わらず、ラン序盤で抜かれ、終わってみれば30分以上離された。
バイクで離せるだけ離しておきたいというものだ。

コースは南下して、東平安名崎へ。
やや疲れがたまってくる上に、嫌なアップダウンが続くエリアだ。
登りは割と得意だが、調子に乗って踏みすぎてしまうクセがある。
先は長い。
登りでは軽めに踏んでも、少しずつ順位を上げられる。
下りでは思い切って足を休め、体力温存。
去年は東平安名崎で足の痙攣を経験しているので、慎重に。
東平安名崎は完全な折り返しなので、前後約4kmの選手たちとすれ違う。
トップ集団はさすがに遙か彼方だが、宮古勢上位は見られるはず。
最初に見かけたのはシンゴ選手。
去年は宮古勢2位。
おお、意外と近いぞ、4kmくらいか。
カッピ選手は見つからなかったが、SGR選手は200mくらい前を走っているようだ。
よしよし、この差をキープできれば上等。

東平安名崎以降は鬼のアップダウンが続くルートで、最初の東急ホテルへ向かう。
アップダウンはきついが、ここはまさに僕のホーム。
なんというか、坂のリズム感みたいなのが身についていて、ラクにスピーディにいける。
バイクに入ってからかなり順位は上げ、車間も広がってきたが、まだじわじわと上げられそうだ。

さぁ長い長いバイクパート、いよいよ残り30kmくらいとなってきたが、ここからが長い!
登りで息が上がって、戻るのに時間がかかるようになってきた。
これ以上心臓を酷使すると、ランがダメだ。
登りはもうスピードを捨てて、ゆっくりダンシング(立ち漕ぎ)で疲労を軽減する。
痙攣も黄色信号。
小さい痙攣が頻発し、そのたびに姿勢を変えたり速度を落としたりしながら、だましだまし走る。
とにかく、これ以上状態を悪化させず、ランにつなぐ。
あとはなんとかなる!
順位はこれ以上あげなくていい。
ランに入ればまた上げられるはず!

最後の10kmくらいはずっとゼイゼイいいながら、なんとかバイクフィニッシュ!
バイクタイムは自分の時計で5時間18分。
時速に直して平均29.6km。
上出来!
100km練習くらいのペースだ。

バイクラックに行くと、SGR選手とその弟のヒロ選手が。
よし、追いついた!
ランなら僕の方が有利なはず。
バイクをラックにかけ、ヘルメットを外し、ランシュに履き替える。
用意しておいたおしぼりで、ドロドロになった顔とサングラスを拭く。
空は曇っているので、キャップはいらないだろう。
おっと、去年はここでグローブを外し忘れて面倒なことになったんだった。
最後にゼッケンベルトを外し、ラン用に用意したゼッケン付きポーチを装着。
ポーチには補給食として、特製の激ウマ黒糖が入っている。
よっしゃ、ランスタート!!

目標は4時間。
とにかく、1kmあたり5分半を超えないように走る作戦。
序盤で飛ばしすぎたら取り返しがつかないことになる。
最近の失敗レースを再現しないためにも・・・
が、GPSウォッチを見ると、5:00/km
イカン!ブレーキ!!高速で減速せねば!!
5時間以上のバイクの高速走行に目が慣れているので、ランの速度が遅く感じてしまうのだ。
バイクの直後は、こんな遅くていいの?ってくらい落としてちょうどいい。
まぁとりあえず足が動くことは確認できたからよし。

しかし。
ほんの2~3km走ったあたりで、違和感。
セーブして走っているつもりが、心拍が回復しない。
横隔膜と胃のあたりがずっと苦しい。
時計は6分/kmを超えたのに、まだラクにならない。
ほんの少し遅れてランをスタートしたヒロ選手が追いついて、話しかけてきた。
が、こちらは息が苦しくて、返答するのも難儀な状態。
「ゴメン、ちょっと苦しくてペース落とすから、先に行ってて・・・」
というのがやっと。

やばいぞ・・・まさに失敗レースの再現じゃないか。
まだまだ40km近い距離を残してこの状態。
このパターンだと、まずタイムを下方修正して、次にライバルとの勝負(自分で勝手に設定してるだけだけど)を諦め、さらにタイムを下方修正して、最後は完走さえできればなんでもいい!って・・・
このレースはシーズン閉幕戦。
酷い結果を出したら、オフシーズンをずっとそういうテンションで過ごす羽目になるかも知れない。
が、タイムも順位も結果でしかないのだ。
レースでモノを言うのは、積んできたトレーニングと作戦だ。
目標に対して正しい量と質のトレーニングを積めたか。
体調の調整、補給の内容、体力の配分などの作戦が狂っていなかったか。
これらが間違っていたら、98%ダメだ。
いわゆる根性で補正できるのが残りの2%。
まぁこれこそが失敗レースで学んだことなのだが。
だから考える・・・考える・・・

根性を封印して今できることは作戦の微調整か。
ラップタイムが6分/kmを超えたあたりで、もう4時間は諦めるしかない。
うん、そこは潔く諦めよう。
ランで100人200人と抜いてやろうと思っていたが、自分にその実力はない。
だが、順位の落ち幅を最小にすることはできるはず。
まずは遅すぎるくらいまでペースを落として、心臓を復活させよう。
幸い、足(の筋肉)は無事だ。
それが過去の失敗レースとの大きな違いだ。
足を回復するのは難しいが、心臓はまだ易しいはず。

実際に7分弱/kmまで落とすと、息苦しい感じが軽くなってきた。
心臓が楽になれば、足は生きているのだから、ラップタイムも6分50、6分40と自然と上がってくる。
数百メートル先行していたヒロ選手に追いついた。
「おお、前田さん、やっぱり来ましたね-!」
「いやいや、ホントぎりぎりだから・・・最後までもつかなぁ」
実際、”死ぬほど苦しい”が”かなり苦しい”になった程度なんだから。
「僕も苦しくてペース上がらないんで、よければ併走しませんか?
6分半くらいで刻んでいきましょう!」
とはヒロ選手の提案。
うーん、苦しいが、気は紛れるかもしれない。
ついて行けなくなったら先に行ってもらうだけだ。
提案に乗って併走することにした。

反対車線は間もなくゴールしようというエリート選手たちが駆け抜けていく。
どの選手もフォームが美しい。
レベルは違えど、疲労の限界であるのは同じだろうに。
まるで単独のマラソンを走ってるみたいだ。
このままトレーニングを続ければ、いつかはあんな風に走れるようになるのだろうか。
まぁいい、今はこのポンコツの心臓がバーストしないように気にしながら、残りの30kmくらいを走るだけだ。

折り返しまで残り4km。
ここからは僕のホームだ。
沿道の応援から名前を呼ばれる。
近所の中学生たちがボランティアをしている。
友達がハイタッチで励ましてくれる。
精神的に一番キツイこのあたりがホームなんて、なんて恵まれた条件!
コースはここで、急な下り坂になる。
通称ナンコウジの坂。
坂は苦手ではない。
さらに今回初めて投入したランシュ「ON」はカチっとした履き心地なのに、衝撃吸収もしっかりしている。
つまり、下りで多少の無理が利く。
坂を軽快に下ったあたりでヒロ選手、
「すみません、ちょっと辛いんで先にいってください、ゴールで会いましょう!」
「うん、またゴールで!!」
言葉にはならなかったが、感謝していた。
ありがとう。
ここまで回復できたのは君のおかげだ。
僕はここから少しペースを上げて、勝負に出よう。
健闘を祈る!!

保良の折り返しが見えてきた。
踊りの衣装を着た子供たちが見える。
選手の応援に来ている地元の子供会だ。
僕の姿に気づいたらしく、休んでいた踊りを再開してくれた。
YOMEと娘たちも必死で応援している。
青年会の友人たちが作ってくれた横断幕が張ってある。
沿道で座っていたおじぃが、マエダがきたぞ!というと、隣にいたおばぁが、マエダさんがんばれー!と叫ぶ。
よっしゃ、充電完了!!
いけるぞ!

ランコースは完全な往復ルート。
折り返し後は、後続の選手すべてとすれ違う。
ライバルの位置を最終確認する場所だ。
すぐ後ろにいることがわかったのは、さっきまで一緒だったヒロ選手に加え、TKY選手、カモ選手、UNO選手、そしてアッツ選手。
みんな去年の自分より格上で、今年こそは、と思っていたライバルたち。
アッツ選手はバイクであれだけ離したはずなのに、やはりランは圧巻。
すれ違いざまの走りを見て、もう逃げ切れないと確信した。
カモ選手はフルマラソンではサブ3ランナー、TKY選手にも勝ったことがない。
UNO選手はスイムの達人ということ以外未知数だったが、ここまで迫ってるとは。
この心臓で逃げ切れるか・・・

心臓は相変わらず苦しいが、ペースは6分前後を維持できるようになった。
2~3kmごとにあるエイドは走り抜けずに歩きながら補給やスポンジを受け取り、短い歩きの中で回復を図る。
そして、よし、次のエイドまでがんばれ!と自分に言い聞かせて走り出す。
どうやったら残り少ない体力を使って、最短でゴールまで身体を運べるかだ。
よく、「自分に負けるな!」「己の敵は己だ!」とか言うが、僕は信じていない。
己に勝つ???じゃあ負けたのは誰だ。
やっぱり負けたのも己じゃないのか。
自分の内面を切り刻んで戦わせるなんて、まるで内戦だ。
国家に例えれば、国が疲弊しているときに必要なのは団結だろう。
だから僕に言わせれば、
「己の一番の味方が己だ」
身体にも心にも、無茶をさせている。
はっきり言って馬鹿げている。
だからこそ、できる限り身体をいたわり、心を引き裂かない。
自分の中に敵を作らない。

残り7km・・・
ここからゴールの競技場までのコースは再び市街地となる。
全行程の95%くらいが終わった。
アッツ選手にはずいぶん前に抜かれたが、他のライバルたちはまだ来ていないようだ。
後ろから足音を聞く度に、いよいよか!?という気持ちになる。
このあたりで・・・ずっと使わずに暖めておいた切り札、「根性」を使ってもよかろう。
劇的に状況が改善することはないが、下降気味のペースを上昇気味に変え、エイドでのウォークブレイクを短くする。
残り時間から考えて、糖分の補給はこの先不要。
冷えた内臓を温めるために、温かいお茶を2杯ほど飲んでエイドを後にする。
苦しい。苦しい。口から心臓が出てきそうだ。
もう本当に究極に限界!というところでエイドにたどり着き、お茶を飲む。
それを2回ほど繰り返して、最終エイド。
残り約2km。
ついに終わったかもしれない。
根性を使うのが2kmほど早かったか!?
でも今更いじくれるところはない。
あとは魂削ってでも走るのみ!
長くともあと15分!

もうこのあたりは沿道の応援が途切れることがないように続く。
死にそうな選手たちを励ますのだから、応援の人たちも必死で声を張り上げている。
「がんばれ!!!もうゴールは目の前だぞ!!!」
朦朧としながら思う。
うん・・・ほんとあと少しだよな・・・でもあと1km、なんて・・・なんて遠いんだ・・・
歩いている選手もいる。
ここまで201km、11時間に渡って走り続けてきて、最後の1kmで歩いている。
それほどに・・・限界を超えてしまったのだろう。
苦しいのは自分だけじゃあない。
この選手たちと、ここまで競り合えた自分を誇りに思う。
ありがとう、名も知らぬライバルたち。

ついに競技場に着いた。
あとはトラックを300mほど回って、ゴールゲートだ。
家族と、友達の家族が待っていて、一緒にゴールゲートをくぐろうと併走してくれた。
子連れの彼女たちは、最後の力を振り絞る僕より、少しだけ遅かった。
ゴールゲート数メートル手前で立ち止まり、YOMEの手から5ヶ月の三女を受け取り・・・ゲートをくぐった。

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終わったぁ・・・
順位もタイムも確認しなきゃわからないが、確認しなくてもわかることがある。
今回は成功だ。
1年ぶりの、悔いの無いレース。
諦めなくてよかった。

ゲートをくぐるとほぼ同時に身体が崩れ落ちたが、YOMEや友達が至れり尽くせりでフォローしてくれたので、医療班のお世話にはならずに済んだ。
みんな人がいいよ。
好きこのんでこんな身体に悪いことやってる人間に・・・w

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立てるようになるまで横になってから記念撮影。
女子11人。
ハーレムじゃwww

感謝。
必死で応援してくれる家族や友人たち。
一日中僕らの世話をしてくれたボランティアさんたち。
僕のレースを一層盛り上げてくれた宮古のライバルたち。
共に長旅を闘った世界中のアスリートたち。
関わってくれたすべての人たちに感謝。

result

swim 1:04’47
bike 5:28’03
run 4:33’43
total 11:06’33

総合334位/1546人
宮古勢6位/68人

オフシーズンはガッツリ心臓を鍛えようと思います☆
次は秋のフルマラソンだ~~♪♪


NAGOURAマラソン2016(100km) レースレポート

今回のレースは、レポートを書かずにおこうかと思っていた。
振り返ってみても、思い出すのは辛いことばかり。
反省と後悔はあっても、評価できる点がほとんどない。
でも結局書くことにしたわけだが。

このNAGOURAマラソン100km、今回が第二回大会で、まだ知名度も低く、規模も小さい。
前回のリザルトを見ると、全体のレベルも低めのようだ。
エントリーしたときには、「もしかしたらかなりいい順位で入れるかも」なんてスケベ心もあったりしたw

僕としては宮古島初挑戦以来のアウェイでの100km。
というか、100kmは宮古でしか走ったことがない。
大会の規約もいろいろ異なる。

  • 携行必需品(持ってないと失格)が多数
    ・・・携帯電話、懐中電灯、マイカップ、ボトルなど
  • 信号を守る
    ・・・つまり交通規制なし
  • などが大きな違いだ。

    荷物の存在は、結構大きいと思う。
    できるだけコンパクトにまとめるにしても、100kmずっと携帯するのだから、それなりに負担。

    さて、キリが無いので前置きはこの辺にして・・・・ヨーイドン!!

    午前4時半。
    ライトアップされた闘牛場跡地から、ヘッドライトを付けたランナーたちが暗闇の小路を走り出す。
    天気は雨。
    明け方に最も雨脚が強まり、午前中一杯降るという予報だ。
    ほとんどのランナーがカッパ姿だ。
    公道に出るまで、公園内の小路を走るのだが、これが暗くて、狭くて、縁石やポールなどの障害物があって、しかもそれが混雑のためよく見えない。
    最初から転倒したりしたら先が思いやられる。
    みんなじっくり気をつけて走る・・・

    公道に出ると、そこは片側二車線の国道58号線。
    当然、歩道を走ることになる。
    信号も多い。
    信号で止まるマラソン大会は初めてかもw
    しばらくいくとコンビニがあった。
    ちょうどいい。
    ルールに則ってポーチにボトルを差してきたのだが、実はスタートする直前に、中身を入れ忘れたことに気づいた。
    最初のエイドまでは12kmある。
    空のボトルを捨てて、アクエリアスを買った。
    レース中にコンビニで買い物をしたのも初めてw

    ついでに、カッパを脱いでコンビニのゴミ箱に捨てた。
    暑すぎだ。
    雨は降っているが、気温は低くないし、カッパナシでも十分温かい。
    捨てたことを後悔するかも、とは考えたが、ただでさえ荷物があるのに、濡れたカッパを持って走るのはイヤだ。
    それに後半は晴れることになっている。
    カッパを脱ぐと、軽快軽快♪

    今回のレースでは、完走以上の目標は立てないことにしていた。
    ひとつには、前回のワイドー100kmで、目標達成に執着するあまり、体調よりも時計を優先、結果、早々に潰れるという失態だったこと。
    もうひとつは、大会5日ほど前に謎の体調不良、病み上がりでのレースとなったこと。
    (DNS:棄権も検討したが、2日前になんとか行けると判断)

    それでもまぁ、軽快に走れて、潰れずに、11時間くらいでゴールできたらいいな~~くらいの気持ちはあった。
    だから、前半とはいえ、軽快に走れるのはとってもうれしい。

    さて、コースは左に折れ、橋を渡って、奥武島、屋我地島、古宇利島、と離島をハシゴする。
    この、離島からさらに離島へ渡っていくのは宮古にはない。
    なんとも不思議な感じだ。
    古宇利島への橋では、すでに夜が明けて、天気が悪いながらも素晴らしい景観だった。
    周りから感嘆の声が聞こえる。
    まぁ宮古の方がキレイだけどね(←地元愛??

    古宇利島を一周して、来た道を戻り、再び国道58号の続きを走る。
    しばらくいくと、75kmの部の選手が逆走してきた。
    どうやらこの先で、75kmのコースは折り返しのようだ。
    選手の間隔からして、かなり上位だろう。
    ここまでときどきおしゃべりしながら一緒に来たランナーが、「僕らのすぐ後ろを走ってるあの子、女子6位みたいですよ」と教えてくれた。
    彼女の応援団の会話を小耳に挟んだのだろうか。
    察するに、僕のいる場所もわりと上位とみてよさそうだ。
    参加者が400人程度なので、最低でも100位、よければ50位くらいにいるかもしれない。
    全身をスキャンしてみても、トラブルも疲労もなさそうだ。
    メンタルも問題なし。
    もしかしたらこのまま、このポジションで走りきれる??

    75kmの部が折り返すと同時に、僕ら100kmの部は右折、文字通り山場となる峠越えへ。
    海沿いのゼロメートル地帯から、標高200mの山を越える。
    終わりの見えない坂を前に、「あ、これだな!」と思った。
    迷わず歩く。

    今回、作戦の一環として、積極的ウォーキングを取り入れてみることにしていた。
    疲れたから歩く、ではない。
    疲れないために歩く。
    「10kmに一度か二度、1分程度のウォーキングタイムを作る」という作戦を立てた。
    1分間の歩きでロスする時間は約30秒という計算。
    走るときがキロ6分、歩くときがキロ12分とすると、ざっくりそんな感じになる。
    これを100km続けると、全部で5~10分程度のロス。
    これだけの時間的コストで、足の潰れを予防し、後半の失速を防げるとすれば、トータルタイムは大きく伸びるはずだ。
    そして、これとは別に、「キツイ登りは基本的に歩く」というのも作戦に入れた。
    登りを走るのは、時間的メリットより体力的デメリットが大きいと感じていたからだ。
    (もちろん、僕の体力で100kmを走る場合、という意味で)
    走ればアホみたいに消耗する登りも、歩けば逆に充電区間となる。
    下りと平地で時間は回収できるはず。

    峠は思った以上に長かった。
    地図だけじゃわからん。やっぱり。
    登り全区間を歩くのはむしろストレスがたまると感じて、軽めのラン&ウォークで行くことに。
    それにしても立派な森だ。
    ガードレールの向こうは崖になっていて、眼下にヘゴの密生林が広がる。
    巨大なヤシのようなシルエットに、超巨大なゼンマイのような芽がニョキニョキ。
    これぞやんばる、まるでジュラシックパークだ。
    実際、ヤンバルクイナもよく目撃される場所らしい。
    今度は写真を撮りに来たいなぁ。

    一度は上がった雨だったが、いつの間にかまた降り始め、雨脚は強くなっていた。
    事前に荷物を預けておけるレストステーションは約48km地点。
    だが今回は何も預けていない。
    そもそもウェアは一着しか持たずに遠征に来ている。
    久々の遠征で準備不足だったのが半分、まぁいいや何とかなるだろと思ってたのが半分。
    自分の経験を過信していたと言えなくもない。
    なんにせよ、ここには着替えやタオル、予備のカッパを預けておくべきだった。
    忘れ物と言えば、ワセリンを忘れたのも痛い。
    こんな雨の中でスタートするときは、脇や股にワセリンを塗っておきたい。
    股擦れは、真綿で首を絞めるが如くだ。
    スタート前にワセリンを塗ったくらいで防げるわけではないが、重症化を何時間か遅らせてくれれば十分だ。

    50km通過タイムは5時間34分。
    悪くない。
    このままいけるとしたら。

    このあたりで沖縄本島東側の海岸線に出る。
    島を横断したわけだ。
    しばらく気持ちの良い海沿いを走る。
    そして再び峠だ。
    前回の峠より若干低めなのだが、体力を消耗してきたのか、かなりキツイ。
    下りで走りながらも、足を削っているように感じる。
    ホントにいいのか。この下り、走って大丈夫なのか。いやむしろもう手遅れなのか。

    峠は越えたが、作戦が崩れたことを認めざるを得なくなった。
    「疲れないために歩く」はずだったのが、いつの間にか「苦しいから歩く」になっている。
    これが残り10kmとかなら、「苦しいけど走る」のもアリだろう。
    でも、目の前にはフルマラソン1本分の距離が残っている。
    がんばっちゃいけない。
    ウルトラマラソンは、他のどんな競技より、がんばっちゃいけない競技かもしれない。
    この大会、丁寧に1kmごとに距離表示があり、しかも子供たちの手書きコメントが添えられている。
    前半ではとても気持ちの良いテンポで現れた距離表示。
    「お♪もう1km走った!?」
    これを長く感じるようになってきたらヤバイ。
    「まだ・・・?あれからまだ1kmも進んでナイ???そんなバカな・・・」
    ヤバイなぁ。
    まだ苦痛は少ないが・・・ここが地獄の入り口かぁ。

    立派なホテルの入り口に「カヌチャリゾート」と書かれていた。
    ああ、ここか。
    懐かしいなぁ、新婚旅行でここに泊まった。
    あの時が初めての沖縄旅行だった。
    あの頃、こんな未来は微塵も想像しなかったな。
    宮古島で民宿やりながら3人の娘たちを育て、島中走り回って、飽き足らずにこんなところでボロボロになりながら走ってる。
    ふ。結構な未来だなw
    あいつら今どうしてるかなー。
    応援がないのはやっぱり寂しいなぁ。

    その先には米軍施設があった。
    今日だけで何度目か。
    道を挟んで反対側に、テントや小屋が並んでいる。
    お祭り・・・ではない。
    ここは辺野古。
    基地建設反対の座り込み運動をしている人々だ。
    プラカードに600と何日目とか書かれている。
    そっか-、そんなに・・・
    僕は基地問題や政府のやりかたにどうこう言うつもりはない。
    そんな知識もないし。
    ただ、必死になってる人たちを見ると、がんばれって思う。
    ん?いつも必死で走ってるときに、がんばれって言ってもらってるからか???

    70kmを過ぎた。
    いよいよ地獄の三丁目か。
    雨は降ったり止んだりを繰り返していたが、徐々に強まってきているようだ。
    背中にいやな悪寒が走る。
    ああ、この感じ。
    風邪引き始めとかによく感じるやつだ。
    病み上がりだからなぁ・・・
    序盤でカッパを捨てたことを後悔し始めた。
    が、どうすればよかった?
    あの時はあれでよかったのだ・・・

    コンビニでも見つけて、カッパを買い直すしかあるまい。
    多少の小銭は持っている。
    エイドで女の子に聞いてみた。
    「ええー?コンビニですか!うーん、10kmか・・・最低10kmはあると思いますよ」
    くっ!さすが地獄!

    コンビニはないが個人商店はいくつもある。
    が、日曜は一斉に休むようだ。
    さすが地獄・・・

    ヘロヘロのところ、応援のおばちゃんがお菓子をくれた。
    個人エイドと呼ぶほどの規模ではなく、ポケット一杯分のチョコや飴などを、通過するランナーに渡している程度。
    チョコは胃にくるので、ハイチュウを一つもらった。
    ああ甘い、これはいい気分転換に・・・ガリッ!!!
    ハイチュウの中に異物だとッ!?
    慌てて口から出してみたそれは、奇妙な形の銀色の金属。
    ああ。俺の歯の詰め物じゃないか・・・
    さすが地獄・・・・・・・・・

    80km
    豪雨と呼んで差し支えない雨。
    体の芯が冷え切ってきた。
    とにかく寒い。
    コンビニ・・・カッパ・・・ホットドリンク・・・あと何km・・・??
    思考がまとまらなくなっている。
    さっきからずっと同じ考えばかりがループしている。
    ラン&ウォークで、平均キロ10分弱。

    時計を見ると制限時間まではまだたっぷりある。
    大丈夫、大丈夫・・・ここから仮に全部歩いたとしても・・・!?

    あまり大丈夫じゃなかった。
    仮に全部歩いて、平均キロ12分だとすると、制限時間に引っかかる可能性が出てきた。
    終盤、キロ12分をオーバーするとかなりマズい。
    DNF(did not finish=リタイア)の3文字が頭をよぎる。
    そ・・・それだけはあってはならぬ!!
    それだけは!
    たとえ最後の完走者となろうとも!

    寒さはいよいよ耐えがたいものになってきた。
    ときどき、全身の筋肉に力を入れて硬直させ、無理矢理熱を作る。
    気休めだ。
    走路員のボランティアが言っていた、「次のエイドまであと少し」だけが希望だ。
    エイドについたら、ダメ元で「ゴミ袋を一枚わけてください」と頼もう。
    もちろん、カッパの代わりにするためだ。
    すでに身の危険を感じる。
    一刻も早くこの寒さに対処しないと・・・
    ここで死んだら・・・
    まぁ僕はいい。
    好き事をやりながら、意地を貫いて力尽きた、なんてのも悪い死に方じゃない。
    でもYOMEと子供たちがかわいそうだよな・・・

    エイドはまだ見えてこない。
    体はさらに冷えたようだ。

    リタイア・・・それも勇気だろうか。
    生きていればこそ、リベンジもある・・・
    ああ・・・っていうかエイド・・・コンビニ・・・カッパ・・・ホットコーヒー・・・

    そんなとき、ガード下に白いテントが見えた。
    ついにエイドについたのだ。
    あの・・とボランティアに話しかけようとしたとき、彼の方が先に口を開いた。
    「カッパ、使いますか?」
    彼の手には新品のカッパ。
    なんと!まさに地獄に仏!!
    言葉だけでは感謝を伝えきれない。
    大げさではなく、命の恩人だと思った。
    早速カッパに袖を通す。
    温かい。
    でも寒い。
    一度芯まで冷えてしまうと、簡単に回復する物ではない。
    でも希望が見えた。
    生きて完走するぞ!!

    そして混濁していた意識がはっきりしたのか、大きな見落としに気づいた。
    ホットドリンクは自販機で買える。
    なんてことだ。
    だれか教えてくれよ。
    自販機ならいくつもあったのに。
    エイドには温かい物を置いていなかったが、20mほど先に自販機が見えた。
    震える手で小銭を取り出し、一番甘そうなホットコーヒーのボタンを押す。
    缶コーヒーは、人肌くらいの温度だった。
    いや、実際は熱かったと思うのだが、僕の手が熱いと感じてくれないのだ。
    それでもそれを飲むと、人心地ついた。
    続けて次はホットココア。
    ああ。うまい。幸せだ。
    もう一本・・・と思って、やめた。
    手持ちのお金はもう残り少ない。
    まだ先は長いのだ。
    それに、これ以上飲むと、胃に変調をきたすかもしれない。
    大丈夫、自販機ならこの先もあるさ。

    90km
    ようやく・・・ようやくここまで。
    ペースはキロ約11分。
    歩くのとほとんど変わらないペース。
    ついにここまで来たぞ、あと一踏ん張り!!
    って思えない。
    もう止めたい。帰りたい。何もかもどうでもいい。
    魔界だ。ここは魔界。
    日常に帰りたい。
    熱い風呂に入って、布団にくるまって寝たい。
    あと10km??
    順調にいってもあと2時間くらいかかる。
    ああ俺、こんなとこでなにしてんだ?
    周囲にランナーは少なく、みんなごくゆっくり走ったり、歩いたりを繰り返している。
    それでもゆっくりと僕を追い越し、だんだん小さくなっていく。
    僕がリタイアしないのは根性じゃない。
    リタイアを宣言する勇気が無いだけ。
    それにリタイアを宣言したって、すぐに保護してもらえるわけじゃない。
    第一、ケータイの電池は切れてるし、エイドまでたどり着いたって、着替えも防寒着もストーブもないんだ。

    もしも90km過ぎで僕のすぐ横に救急車が来て、「乗っていいですよ」と言われたら、多分僕はそこでリタイアしていたと思う。

    徐々にあたりが薄暗くなってきた。
    再びヘッドライトのスイッチを入れてみたが、あまり明るくない。
    明け方の数時間しか使わないはずだったので、電池を交換してこなかったせいだろう。
    足下の水たまりがよく見えなくなってきた。
    見えてもよける元気があったかどうかわからないが。

    雨は最後の最後、ゴールの瞬間まで降り続けた。
    ついに朝の闘牛場跡に戻ってきた。
    闘牛場跡の階段を上ると、石造りの通路の向こうが眩しく光っていた。
    足下には赤絨毯が敷かれている。
    走っているのか歩いているのかわからないまま、フィニッシュラインを越えた。
    どうやら終わったらしい。
    感動のゴール・・・ではない。
    もう走らなくていい、という安堵感。
    そして、リタイアするタイミングを逸して、いたずらに命を危険にさらした自分への嘲笑。
    後味の悪さは、前回のワイドー100km以上・・・

    レースレポートは以上!

    楽しく愉快なレポートを期待していた方がいたら、ごめんなさい。
    こんな目にあっても、やっぱり僕はウルトラが好きみたいです。
    いや?失敗するとこんな目に遭うような競技だからこそ、成功したときの達成感もまた比類無いといえるのかな???
    僕はこれからもきっと走り続けるし、懲りもせずにタイム狙っていくし、いずれは表彰台とか思ってたりもする。
    他人にどう思われるかじゃなくて、何をどうすれば自分が目一杯楽しめるかどうかの問題。
    遊びなんだから。

    それから、今回は単身の遠征、ゲストハウスでレース前後の宿泊をしたのだけれど、楽しい出会いがいくつもあり、人情に触れることのできた旅でもあった。
    地元や、日帰り遠征では起こらない出会い。
    またやりたいな~、遠征♪
    今回のレース、「出会い編」についてはまた!
    書くかどうかわかりませんがww


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