ども。sassyです。
最近ブログ運営は縮小中だけど、レースレポートは書いておこうと思う。こんなんでも期待してくれてる方もいるらしいしw

 今回で4度目の宮古島トライアスロン、通称ストロングマン。一昨年、脱トライアスロン宣言をして、ランナーとしてひたすら走り込んできたのだが・・・去年観戦に回ってみてよくわかった。観戦とか無理だ。あの熱狂の中、苦しい顔をしながらも、足を引きずりながらも、車道を駆けていく大勢の選手たち。仲間やライバルたち。それを歩道に立って見ている自分。なんだこの疎外感!!なんで自分は汗もかかずに突っ立ってんだ!?違うだろ??・・・・とまぁそんなわけで、十八番の「前言撤回」からの、トライアスロンエントリーとなった次第。とはいえ、自分の立ち位置は見失っていないつもり。僕は「トライアスリート」ではなく、「トライアスロンもやるランナー」だ。だから、先月のフルマラソン連チャンが終わるまで、スイム、バイクは息抜き程度の練習にして、ひたすら走った。そのあと一ヶ月間、スイム、バイク主体練習に切り替えた。溺れない程度に泳ぎ、一昨年並みのタイムでバイクを走り、ランで千切るというのがテーマ。タイムや順位は第一目標にせず、とにかく限られた時間で体と心をトライアスロン仕様に切り替え、当日なりのベストを出すことに専念することにした。

 早朝三時半起床。レース前の不眠症は定番だが、今回は比較的眠れた気がする。外は雨。しかもかなりの雨脚。雨のトライアスロンは、バイクが怖い。路面抵抗が下がってスピードが乗りやすくなるのだが、それに加えてブレーキが効かなくなる。当然スリップも多くなる。高速走行時に転倒したら、多分救急車。・・・ま、いっか。天候くらいで一喜一憂するほどの初心者ではなくなったらしい。軽く朝食を取って、五時前に出発。

 会場に入ってみると、雨の中すでに多くの選手達がレースの準備中。寒い。防寒を兼ねて、早々にウェットスーツを着用。風が弱いので、スイム中止の可能性は低いが、雷がなった場合は別。何にせよ、レース前にお腹を冷やすのだけは避けたい。この雨のためだと思うが、肩や腕にマジックでレースナンバーを書き込むナンバリングが、今回はナシ。作業がひとつ減って楽なのだが、アレが「トライアスロンらしさ」 のひとつなので、ナシだとなんか落ち着かない。雨の中のレース準備はほんとに面倒くさい。バイクには昨夜からカバーがかけてあるが、駆動部を濡らす時間は最小限にしたいので、外すタイミングを悩む。シューズや着替え袋など、できる限り濡らしたくない荷物も多い。日焼け止めを塗るかどうか悩む。ああ。。もう。。。。そんな中、スイム決行のアナウンス。はいはい、豪雨だろうと泳ぎますとも、覚悟してましたよ。

 今回のレース、「当日なりの、自分なりのベストを」と、お行儀の良いことを言ってはいたが、始まってしまえばそこは勝負の世界。ライバルがいなきゃね。アスリート仲間はだいぶ増えたが、その中で今回のライバルと目している地元選手を3人紹介しましょう。

□■蕎麦屋選手■□
別名、ちっこいおっさん。恐るべきスイムで先行し、逃げ切るタイプ。「俺、今年は全然だめだよ~」が口癖だが、信じてはいけない。個人的に、「負けたらパフェおごり」勝負をしている。

□■KPP選手■□
相当な実力者なのだが、なぜか僕に「宮古トライで勝負しましょうねー」と言ってくれる。アンタには敵わんよ、というのは簡単だが、いい状態でランにつなげれば、もしかして・・と思っている。

□■リーダー■□
宮古トライアスロン業界で、練習会を主催したり、懇親会を企画したり、いろいろと骨を折ってくれている頼りになる選手。実力的には僕より格上と見ているが、彼も少々ブランクがあるので、いけそうなら狙ってみたい。

以下、選手たちは敬称略で書かせていただきます。

 悪天候の影響で、15分遅れてのレーススタート。スイムコースは従来、ブイとロープで区切られた3kmのコースを一周するものだったのだが、去年から1.5kmコースを二周に変更になっている。僕は変更後初挑戦だ。二周ってことは、インとアウトの差が大きくなったんだよなー、と思い、とりあえずイン側からスタート。僕の平凡なスイムタイムからすれば、どこからスタートしようと、激戦区になるのは当然。だったら、せめて短距離を、と思ったのだが・・・想像を遥かに超えるバトル。え?え?スイムってこんなんだっけ??おい、ちょっとまて、コレやばくないか??おい、呼吸させろよ、ってか背中に乗るな!足首掴むな!ぶへっ(ビンタ食らった)・・・スタートから400m、一瞬、心が折れかけた。残りは2000m以上、1時間近く。このイワシの群れのバトルロワイヤルみたいなのを、耐えきれるのか?一滴の墨汁が、桶の水を徐々に黒く染めていくように、心に恐怖が広がっていく。マズい。スイムの過酷さ自体よりも、心が染まっていくこの感じがマズいぞ。とにかく一度ロープの外に退避して、立ち泳ぎしながら、心と体勢を整える。深呼吸して、自分に言い聞かせる。大丈夫。俺は何度もこれをクリアしたじゃないか。気持ちで負けなければ、体力は腐るほど余ってる!気持ちを立て直して、イワシの群れに戻る。とにかく、少しでも広いスペースに入り、蛇行したりぶつかったりしてくる選手から離れる。タイムはこの際忘れよう。そうして二周目に入ると、かなり人口密度も下がり、泳ぎやすくなった。ああ。もう大丈夫、あとはいつもどおり泳ぐだけだ。泳ぎきってビーチに上がってみると、タイムは1時間と3分ほど。思ったより良いぞ。1時間10分以内ならヨシと思っていたのだから。

 小走りしながらウェットを脱ぎ、シャワーで海水を流す。トランジッションはやることが結構多い。上級者は、トランジッションの手際も非常によく、ここだけでも数分の差がつくようだ。土砂降りの中、要領の悪いトランジッションを終えて、バイクに飛び乗る。ああ。やっと陸に上ったんだな。もう海はこりごりだ!少なくともこれで溺れることはないぞ。スイム、バイク、ランと続くトライアスロンだが、これは僕の苦手順でもある。つまり、後半ほど得意なわけで、スイムさえ終わってしまえば、あとは順位をあげていくばかり。さぁ、ライバルたちよ、いまどのくらい離れているのかな?待ってろよー!

 雨の中のバイクは、案の定スピードが乗る。風も弱く、走りやすい。スイムによる体調不良もなさそう。よしよし、ここまでは快調。だが、バイクでがんばっちゃいけない。なにしろ6時間近くもペダルを回し続ける上に、そのあとでフルマラソンだ。ランパートが僕の真骨頂なのだから、バイクで困憊なんて最低なのだ。前述したように、今年はバイクの練習量が絶対的に少ない。ゴリ押しは禁物。それは練習段階からわかっていて、だから技術練習に専念してきた。距離よりもトップスピードよりも、とにかく安定したペダリング。回転数を90~100で安定させ、高すぎず低すぎないトルクを保つように、こまめにシフトチェンジする。登りや逆風に立ち向かわない。下りや追い風では、足を休めつつも適度にトルクをかけて、もらえるタイムボーナスはもらう。

 トライアスロンの面白いところだが、種目が変わるたびに、周囲の選手層が変わる。スイムが苦手だがバイクがめっちゃ速いとかよくある話で、自分が失速したわけでもないのに、弾丸みたいに追い越していく選手がいたりするし、信じられないくらいノロノロ漕いでいる選手もいる。単種目競技ではあまりお目にかかることがない状況である。僕の場合、スイムよりはバイクが速いので、徐々に順位は上がっていく。が、ときどき弾丸ライダーが右側をぶっ飛ばしていく。僕が5人くらい抜くと、1人くらい弾丸が通過していく感じか。だが、バイクも50kmくらい進めば、だんだん周囲のメンバーは安定してきて、同じような顔ぶれで抜きつ抜かれつとなってくる。ライバルたちはどこにいったのかねー、と思っていたところ、池間大橋でKPPとすれ違う。池間大橋は折返しコースではない。島を一周して橋に戻ってくるコースなので、その差はまるまる島一周分以上、距離にして約10kmか。早速無理ゲーな匂いがする。結局それからライバルたちに会うことはなかった。100kmほど進んで、東平安名崎を越え、コースは自宅周辺へ。このあたりで家族と一緒にケースケさんファミリー(さんさーらの元ゲスト、現在宮古在住)が応援してくれているはず。直角カーブの向こう側で、彼らの姿が見えた。手作り横断幕をかかげて、子どもたちと手を振っている。いやー、うれしいねぇ。ちょっと充電できたぞ。さぁ、バイクも残り3分の1程度だ。

 バイクコースは終盤までいやらしい坂が続く。例年だと、ここで足を使ってしまうのだが、今回は冷静だった。高めの回転数を維持できる坂はサクサク登り、そうでなければ、さっさとダンシングでハムストリングを温存。技術練習と作戦が功を奏したか、バイクフィニッシュ時にかなり足を残せた。おまけに、タイムも想定よりかなり良い。5時間28分だが、スイム後のトランジッションを含むので、おおよそ時速30kmで巡航できたことになる。こりゃトータル10時間半はいけるかね♪♪

 再び要領の悪いトランジッションを終えて、いよいよランへ。バイクの間もコロコロ変わった天候だが、とりあえずは晴れた。足も生きてる。お腹は冷えてない。バイク前にワセリンを塗り忘れるという大失態をしたのだが、ゴールデンボールが擦り切れて出血する前にランにつなげた。ランの目標タイムは3時間半~4時間。が、とにかく状況に対応するのが大切なので、タイムには執着しないようにする。走り出しは当然、足がカックンカクンするのだが、想定内だ。数キロ走れば、安定してくるはずである。ランに入ると、固形物を食べられるのもうれしい。バイクではジェルと飲み物だけなので、胃が気持ち悪くなってくる。

 ランスタートから10kmほど走ってみて、わかった。結構苦しい。キロ5分~5分半くらいのラップで来ているが、これでは3時間半に届くことは絶対ない。呼吸の感じからして、これ以上のペースは、潰れる恐れがある。エイドでのタイムロスも想定以上だ。固形物を取れるのはありがたいが、立ち止まる時間も長くなる。が、時間を気にしすぎて補給を怠れば、恐ろしいことになる。気持ちも持たない。
 
 ランコースは一本道で、折り返し地点が自宅周辺。折返しからの距離で、すれ違う選手たちとのタイム差を推測できるし、折返し地点で応援してくれている家族から状況を聞くことも可能。ずっと姿を見ないライバルたちは、僕の前方を走っているはずだが、一向に背中は見えない。焦ってペースを上げたくなるが、それはガマン。まだ長い。現状のペースでも、徐々に順位を上げているのだから、贅沢を言ってはいけない。誰も僕を抜いていくランナーはいないのだから(実際、ランパートで順位を170ほど上げた計算になるのだが、その間僕を抜いたのは数人だった)。

 ラン往路もいよいよ終盤に入り、地元感が増してくる。エイドでは、保育園の先生たちが「ましろのパパが来たよー!!」と応援してくれたり。沿道では、娘の小学校の子どもたちも応援してくれる。いいねぇ、この一番苦しいポイントで。地元ボーナスだなw 折返しまで残り2~3kmの地点でついにKPPを確認。彼が宮古勢2位のようだ(一位はセミプロクラスでダントツ)。うーむ、しかし距離を考えると、圏外だな。4kmの差だとして、それを残り23kmで詰めるとなると、6km弱につき1kmだ。仮にキロ6分で走っていると1kmにつき1分詰めるというのとになる。つまり、KPPよりも1分速いキロラップが必要。うーむ。相手が初心者ならともかく、無理だな。こっちが破滅する。バイバイ、KPP!今回は君の勝ちだ!!只今を持ってライバル解除させてもらうよ!もう追わない☆

 対向車線の選手を注意深く観察しながら走ると、折返しまで1kmあたりで、ついに蕎麦屋とリーダーを目撃!かなり近くを走っているようだ。蕎麦屋は僕を見た瞬間「イターーーー!!!」とシャウトしてそのままハイタッチ。わかるわかる、僕も100kmマラソン折返しでけんけん堂を見たときそんな感じよw だけど、、2km差かぁ。さっきの計算を応用すると、キロあたり30秒くらい詰めなきゃならないのか。蕎麦屋が失速しない限りは厳しいなぁ。ってかさ、、スタート前、「今回は11時間切れないだろうなー」とか言ってたぢゃんかよ。コレ、10時間半ペースだし!ちっ!謀られたな・・・。 リーダーの方は、「うーん、2kmかー、近いなーーー」という呟き。おや?案外弱気になってないか?もしかして失速中とか?まぁいいや、追いつくにしてもそうでないにしても、レース最終盤での話だ。とにかく黙々と走るさ。

 折返し地点は知り合いだらけ。ほんと好きだな、このポイント。トライアスロンのコースなかで一番好きだ。マナの姿が見えて、がんばれーとかナイスランとか言うのかと思いきや「蕎麦屋さんが、パフェいただきって言ってたよ!!」だと。ここでアオリかい!・・・あ、そうか、蕎麦屋はここでフカした数分後に僕を見て、「イターーーー!!!」ってなったのかw うーん、なんとかして追いついて、次は「キターーーー!!」って言わせたいよなぁ。

 とかなんとか考えて気を紛らわせてはいるものの、実は僕の体もかなり限界。最後までバネのある走りをしようと、なんとかフォームを意識しているが、呼吸はゼェゼェするし、胃はおかしくなってるし、暑くて意識も朦朧。歩きこそしないものの、エイドの各駅停車。油断すればランで4時間を超えてしまう状況だ。だが、もうトライアスロンは終わって、今は得意のマラソンだ。ただのマラソン。過去何レースかの中で、苦しかった記憶を引っ張り出してみる。残りは20km弱。ペースは5分20~30。・・・うん。イケる。もっと辛い状況はあった。もっと痛い思いもした。大丈夫、キープでイケる。

 残り10kmほどの地点で、ついにリーダーを捕まえた。思った以上に失速している。「先に行ってください!今回はもう無理なんで、とにかく歩かずにゴールを目指しますんで!」と・・・。うむ、悪いが先に行くよ。ライバルを抜くというのは、有頂天になる瞬間なのだが、追うものと追われるものが入れ替わる瞬間でもある。ここから先ゴールまで、背後に怯えることになる。今はリーダーが失速していても、数分後には彼が復活して、自分が失速しているなんてことはよくある。ほぼ同じ地点に、観戦のけんけん堂がいて、「蕎麦屋と6分くらいの差だよ!」と教えてくれた。リーダーの近くに蕎麦屋もいるかと思っていたが、そんなに先に行ったのか・・・。残りの10kmを、一切失速せずに走りきれば届く・・・かもしれないというギリギリの差。が、僕の方もすでに失速し始めている。だましだまし走ってきたが、左のハムストリングが攣る頻度が上がってきた。突然左足が激痛とともに硬直して、全く動かなくなる。倒れないように両手で左足を支えつつ、歩道の縁石に足裏をゆっくりと押し付けて、ハムストリングをストレッチする。とりあえず足が動くようになったら、すぐに再発しないように、ゆっくり走り出し、少しずつ少しずつペースを上げる。これだけでかなりのタイムロスである。それでも、「また動いてくれてありがとう、左足」と思う。自分の中で、「なにがなんでも蕎麦屋に追いつけ!」という声と、「もういいだろう、リーダーに捕まらないギリギリまでペースダウンしようぜ」という声が聞こえる。そして、両方の声に、「黙っとけよ」と答えて、また走る。いいのだ。結果は結果だ。レースが終われば自ずとわかる。今向き合うべきは「今、この瞬間のベスト」だ。玉砕でも妥協でもない。

 1kmが長い。次の1kmはさらに長い。長い長い1kmを順番に、ひとつずつ踏んで、ついに陸上競技場、ゴール会場に帰ってきた。蕎麦屋の背中はついに見ることができなかった。振り返ってみたが、リーダーもまた、近くにはいないようだった。ふぅ、、のこり約300m、ライバル間の順位変動はもうあるまい。今年は応援の家族たちとゴールテープを切れそうだ。ゴール数十m手前で待っていた家族や友達は、思ったよりもだいぶ多かった。ご苦労さん。一日中応援するのも大変だったでしょ。おかげさまで、ヒーロー気分の一日を過ごせたよ。いい一日だった。死ぬかと思ったけどね。KPPは速かったなぁ、ワンランク上だな。蕎麦屋にパフェをおごるのは悔しいけど、おかげで盛り上がったし、来年返してもらえばいいや。リーダーに勝てるとは思ってなかったけど、勝負事ってそうだよね、金星いただいておくよ~。

【結果】
総合タイム 10時間38分46秒
総合167位(宮古勢5位)
スイム 1時間4分
バイク 5時間28分
ラン 4時間6分

ちなみに・・・
自分の時計では、ランのタイムは3時間59分(公認記録にはトランジッションタイムが含まれるため)、自己ベストを約30分更新。
スイム、バイクはゼロ成長のため、ラン短縮だけでベストを出した形。
うーむ・・・練習の成果というか・・・ww

ps 写真提供、濱川さま、ありがとうございました。