こんにちは。
またやってきました、超主観マラソンレポート。
最近こんなんばっか書いてるような・・・
まぁいいよね、素人の書くブログなんて、好きなことだけ書き殴ってれば(開き直りw)

さて、今回のマラソン大会は5つの部門があり、それぞれ100km、50km、23km、10km、2kmとなっている。
ちなみに2kmはファミリーで楽しくジョギングしようというもの。
僕が出るのはもちろん100km!!
マラソン好きが昂じて精神を病んでしまった人々が全国から700名以上も集まってきた。

前日は8時に就寝。
当日午前3時起床。
あまり寝た気がしない。
子供が遠足前になると寝れなくなるアレだ。
朝食はウィンナー6本と目玉焼き3つ。
前日にたっぷり炭水化物は摂ってある。

P1000887
午前4時半。
会場にてスタート前の記念撮影。
2年ほど前に宮古に移住してきたときはほとんど知り合いもいなかったのに、マラソンやトライアスロンでたくさん仲間ができた。
去年も100kmを走ったが、今年は仲間たちも一緒に走っているというのがテンションを上げてくれる。
仲間内でも、僕なんか足下にも及ばない人間境界線の選手や、初めて100km出ますって選手、100kmなんて絶対やらないという健全な選手まで、いろいろ。
みんなで、「またゴールで会おう!」って誓い合ってスタートラインへ。

ちなみに今回のレースはスピードレースではないので、時々写真でも撮ろうと思い、スマホを携帯することにした。
これは正解だったようで、終盤に救われることになるのだが、それはまた後で。

午前5時。スタート!

700人が真っ暗な空の下を走り始める。
長い旅路は始まったばかり。
一部のスーパーサイヤ人たちを除けば、みんなゆっくりしたペースで走る。

僕の作戦は、前半50kmを7分弱/kmのペースでしっかり抑えて走り、後半に入って6分/kmに加速、残り20kmくらいでまだ余裕があれば、さらに加速していこうという後半重視型。
「タイムを貯金するな、体力を貯金しろ」という小出監督の本で読んだセオリーだ。
この100kmという距離、作戦を立てても破綻することが多いのだが、今回は「疲労困憊でスタートするフルマラソン」と考えてみた。
だから最初の50kmは準備運動くらいに考えなきゃいけない。

走り始めからしばらくは100km初参加のエド選手と併走した。
彼女は100kmこそ初めてだが、ロングトライアスロン(swim3km bike155km run42km)の常連。
ベテランアスリートなのだが、さらに今回のために1年かけて練習を重ねてきたらしい。
とにかく制限時間をいっぱいに使って、確実に完走するのが目標だ。
先は長いので、しゃべりながら走れると時間の経つのが早くて助かる。
これからのレース展開だとか補給食の話だとか、あーだこーだとダラダラしゃべりながら来間大橋へ。

来間大橋は数少ない折り返しのあるポイントで、上位選手たちとすれ違うことになる。
誰が通るか対向車線を眺めていると・・・
キタ・・・
宮古のトップアスリート、ガッツ選手
なんと今回は裸足での出場!
裸足でアスファルトを100km・・・
地球人ではないかもしれないという疑惑がさらに濃くなった。

その後少し離れてKKB選手
彼も100kmは初めてだが、走力は僕より遙かに上。
初参加で大胆にも10時間切りを狙うらしい。

あと何人か、すれ違うはずの格上アスリートを探したが見つからなかった。

すれ違いが終わって道が広くなったところで、エド選手とは「またゴールで!」と言って分かれた。
僕の方が少し速いペースを組んでいたので。
長い長い一人旅の始まり。

IMG00122
少しずつ空は明るくなり、25km地点を通ったあたりで日の出。
周りの選手たちの一部は、立ち止まって朝日を撮っている。
先は長いし、僕も見習うことにした。

今回のコンディションは中の上くらいだろうか。
2日くらい前から右臀部に筋肉痛。
多分慣れない動きをしたときのものだろう。
あとはおおむね問題なし。
ただ、この辺りまで走って、少し足首に疲労を感じる。

IMG00124
8時30分。池間大橋。
有数の絶景ポイント。
初めて宮古に来てる選手なんかは、絶対ここで写真撮りたくなるだろな。
とか思ってたら、橋の中央辺りで、前方の選手が立ち止まり、こっちを振り返ってなにか叫んだ。
「あーーっ!!スゴイ!!ウミガメがいますよ!!」
橋の下をのぞいてみると、真下に大きなウミガメが浮き上がってきて、息継ぎをしているところだった。
お~っ、ウミガメ!叫びたくなる気持ちもわかるw
僕なんかもたまにしか見られないので、得した気分。
ちょっとテンション上がる♪

橋を渡ったら池間島を一周して、もう一度橋を渡って宮古島に戻る。
池間島に入ってすぐに、一周終えて橋に戻るKKB選手を発見。
「わいどー(がんばれー)」
と声をかけるも、
「キッツイよ~」
と返ってきた。
意外だなー、調子悪いのかな。

「マラソンってあんな長い時間、何考えて走ってるの?」と聞かれることがある。
もっともな疑問だし、選手の数だけ答えはあると思う。
だがざっくり分けて、「アソシエーション」と「ディソシエーション」という思考パターンがあるようだ。
アソシエーションは、体の隅々に注意をめぐらし、心拍や筋肉の異常などを感じ取ることで、いろいろな微調整をし、パフォーマンスを上げるというもの。
ディソシエーションは逆に、景色を眺めたり、他ごとを考えたりして、苦痛や退屈から気を紛らすというもの。
察しの通り、ハイレベルの選手ほどアソシエーションで走っているらしい。
僕の場合は今のところ、フルマラソンまでなら8割方アソシエーションで走ることができる。
が、100kmともなると気分転換が必要になってきて、ディソシエーションをやる時間が長くなる。
打ち上げのビールをイメージしたり、脳内保管してあるマンガを読んだり、このブログに書くネタをまとめたりw

蛇足だが、ディソシエーションで走っているときはこんな感じ。
pod334
(写真はイメージです)

なんというか、自分は自動操縦のロボットのコックピットに座っていて、足を組んで計器類をぼんやり眺めている気分。
どこかでアラートが表示されたらチェックする。
でも自分は走らない。
体が勝手に走ってるのを眺めてるだけ。
ん・・・?意味わかんないかな・・・ww

IMG00125
10時30分。中間エイドステーション到着。

やっと・・・半分キタ!!
ここは50kmの部のスタート地点でもあり、100kmの部では最大のエイドステーション。
事前に送ってあったウェアに着替え、炊き出しのゆし豆腐やおにぎりをいただき、心機一転!
50kmに出る選手も集まってきていて、知り合いもちらほら。
おお。往年のライバル、M選手発見!
彼も今回50kmなので、勝負はお預け。

スタート地点で会えなかったND選手も発見。
彼はいつも一緒に練習しているメンバーではなく、地元繋がり。
歳の近い子供たちもいるし、家族ぐるみでつきあっている。
去年も一緒に100kmを走り、余裕はなかったが無事に完走。
お互いに初めての完走だった。
50km地点には先に到着していた模様。

そんな感じで15分くらい休んだら出発。
50kmが出発するのが11時なので、あと15分くらい。
その後は50kmの上位選手が僕をガンガン追い越していくだろう。

僕の方も予定通りここからペースアップ!!
股関節、足首、足裏あたりに黄色信号が出ていたが、「疲労困憊のフルマラソン」なんだからそのくらいは仕方ない。
それよりもここまで、走りたい気持ちを必死に押さえ込んでローペースを維持してきたのだから、思い通りに走れることが嬉しい。
走り出してみれば、思ったより体も軽い。
なんて気持ちいい!!
予定ペースよりも20秒くらい速いが、しばらくは体に任せて走りたいように走らせよう。

ずっと上位の選手の事情はわからないが、僕の走っているエリアでは、本気で後半重視の作戦を立てている選手はほとんどいないようだ。
明らかにみんな失速している。
そこをこっちはギアを上げてゴボウ抜き!
ますます気持ちいいィィィッ!!

60kmくらいまでは一応慎重に体調を見守っていたが、まだまだ行けそうだ。
すぐにND選手には追いつき、さらにはKKB選手にまで追いついてしまった。
あ・・・ホントに調子悪いんだな。
少し申し訳ない気もしたが、何事も本番というのはそういうこともある。
実力=結果とはならないこともよくある。

コースは過酷な登り基調のエリアに入り、多くの選手が歩いていた。
ウルトラマラソンでは、「登りは歩く」と決めておくのも完走のための戦略としてアリだ。
少しのムリやがんばりの積み重ねが、終盤を迎えるまでに足をズタズタにしてしまうからだ。
だが今回、僕は目標のひとつに「絶対歩かない」というのを掲げていた。
加えて現在絶好調!
どんどん抜かして抜かしてテンションも最高潮!

「誰もッッ!誰も僕の前は走らせないッッッ!!!」
事実、80km過ぎまで、僕を抜いていったのはピンクゼッケン(50km選手)のみで、視界に捉えた白ゼッケン(100km選手)はことごとく抜いた。
タイム目標は12時間切りだったが、このペースならなんと10時間台を狙える!
よーし、取ったるぞー、順位ももしかしたら二桁いけるんじゃないのか!?

思えば、あの頃が最も幸せな時代だったなぁ。
若さと体力で無理を通して分不相応な夢を見て・・・青春ですな。

1421041139578
東平安名崎(約75km)を駆け抜ける図。
YOMEと子供たちが応援に来てくれていた。
東平安名崎の名物、人力マンも三線を弾きながら応援してくれた。

東平安名崎は、コース上最後の折り返しポイント。
往復で5kmくらいあるので、自分の後ろに誰がついてきているか、かなりよくわかる。
すぐにK選手(弟:50km)がいた。
彼は若くて経験は浅いが、高い潜在能力のある選手。
数年後に彼の前を走り続けるには、相当の努力が必要だろう。
そしてライバルのM選手、同じく50km。
追いつかれるのは時間の問題。
そしてその後にKKB選手・・・やはり。やはり極端には落ちてない。
もちろん100kmマラソンは自分との戦いなのだが、仲間やライバルの位置は気にするなという方が無理というもの。
負けたくないが、見当たらないとそれはそれで落ち着かない。
・・・コレって恋??

80km

東平安名崎の少し後でK選手(弟)が軽く挨拶をして抜いていった。
が、彼はエイドで止まるが僕は止まらない。
そういうわけで、抜きつ抜かれつを繰り返していたのだが、80km過ぎで決着がついた。
僕の足が終わったのだ。
ここまで、約6分/kmを維持してきたのだが、それができなくなった。
そしてこの先は、終盤にして最大の難所、七又の連続坂。
自宅に近いこのエリアは普段の練習で大いに活用しているのだが、今の足でこの坂を越えるのはあまりにも無理があることもわかってしまう。
一般的なマラソンコースではまずあり得ない勾配のアップダウンが5つくらい続く。
ここまでは足に負担をかけないエコノミーな走り方を自分なりにやってきたが、この坂の下りではそれがもうできない。
下り坂は適度に回転数を上げて、太ももの筋力に頼ったブレーキを使わずに軽快に駆け下りるのが理想なのだが、すでに回転数を上げる余力がないのだ。
余力がない上に、非効率な走り方を強要される。
爪が割れそうだ。
気持ちも折れそうだ。

pod334
(写真はイメージです)

下半身の骨、筋肉、関節からはひたすらアラートが発信され続け、無事な場所を探すことが困難な状況。
体の至る所から赤信号が出ている。
すべてが痛い。
いい加減にしないと肉体が崩壊するぞ、とのサイン。

もういいぢゃん。
少しくらい歩いたって12時間は絶対切れる。
11時間は絶対切れない。
そこまでしてなぜ走る???

そこで軽自動車が脇を通過する。
アスリート仲間が窓越しに「前田さん、がんばってーー!!」
ぐっっ!!歩けねぇ・・・

それでもやっぱり無理だ。
もう応援もいない。
歩いてラクになろう。
あと少しと言うには長すぎる道のりだ。
で、ふと去年のことを思い出す。
・・・歩くともっと痛いぞ。
そうだった・・・
立ち止まったり歩いたりして痛みが軽減するほど現状は甘くはないのだ。
走っても歩いても痛みは同じ。
そして歩いたら痛みの継続時間は長くなる。
ふぐぅっ!歩いたら自滅か!

・・・そうだ。「復活」だ。
ウルトラマラソンには復活がある。
多くの選手がそう証言していて、僕も過去2回の大会で経験している。
つまり、一度潰れた足が復活するのだ。
すべてを諦めかけた矢先、ふっと足が軽くなり、急に走れるようになる。
まるでドーピングだ。
いや、ある意味ホントにドーピングなのだろう。
エンドルフィンやドーパミンという脳内麻薬が存在するのだ。
きっと復活は来る。

90km。
IMG00130
エイドで撮ってもらった。
「もうホント無理だから。記念写真撮ってもらえませんか?」ってww

「え~、まだ大丈夫そうですよ!がんばってください!でもホントに無理なら回収車呼びますよ、無理しないでください」
「ありがとう、でも無理するためにこんなことしてるんで・・・。いってきます☆」

でもあとから写真見たら、ホントに余裕そうだ。
あの時は死ぬと思ってたはずなのになぁ。

90km過ぎでM選手が抜いていった。
彼に抜かれるのは予定通り。
ほんのいくらか言葉を交わしたが、一番聞きたかったことは言葉にならなかった。
それは・・・
「KKB選手は近くにいる?」

覚えているだろうか。
KKB選手は僕より走力のある選手なのだが、60km辺りで追い抜いた。
ここで僕が失速したら、きっと追いついてくる。
実力的には仕方ないことだが、掴みかけた金星を手放すのがもの凄くイヤなのだ。
「前田さんもがんばったけど、途中飛ばしすぎたね(はーと)」
レース後に優しく言われるの自分を想像して、「イヤアアアァ」と頭の中で叫ぶ。
あ、これはあくまで意識混濁状態の僕の妄想なので、KKB選手がイジワルな人という意味じゃないです。
むしろ僕なんかライバル視してもらえるレベルじゃないしw
ともかく、M選手に追いつかれたことで、後ろから追われる恐怖をひしひしと感じるようになった。
実際、この辺りでは、少し前に抜いた白ゼッケンの選手が何人も僕を抜き返していった。
ぐっ・・・失速するというのはこういうことだ・・・

IMG00131
交差点の誘導をしていたボランティアさんにまた写真を撮ってもらう。
「死にそうなランナーの絵を撮ってもらえませんかw」

え?そんなことしてるんなら黙って走れ!って?
うん、僕もそう思うんだけどね・・・
これがまた気晴らしになるのだ。
肉体的には1~2分足を止めるだけなのだが、気持ちがリフレッシュする。
スマホをポーチに入れておいた甲斐があるというものだ。
切れそうになる気持ちを、人とのくだらないやりとりでつなぎ止めることができる。
「あはは・・・こんなんでホントにリタイヤするわけにはいかんわな」ってまた走り出せる。
こうやって何回か気晴らしをやりながら、「絶対歩かない」の誓いを通す。
写真撮っただけさ。歩いてないもん。

95km

ついに「残り5km」の看板が現れた。
地獄のアップダウンは終わり、ここから先は比較的平坦なラスト5km・・・
エイドでは欠かさず立ち止まり、コーラを飲んで、エアーサロンパスを借りてスパッツやソックスの上からブシュブシュ吹き付ける。
エアサロなんて、フルマラソンでは絶対使わない。
「あんなもん、ただの気休めさ。時間の無駄」
とか言ってるんだけど、ここではその気休めこそが何よりも欲しい。

GPSウォッチを100mごとに見る。
残り・・・4600m・・・
長い。100mが長い・・・

が。動くぞ。足がさっきまでより動く。
来たか!?復活か!?
ここで復活すれば、逃げ切れるぞッ!
痛いッ!朦朧とするほど痛いがッ!残り30分少々ならやれるっ!

100m・・また100m。
残りの距離は減っていく。
いいんだ。このままいけば。
もとから無傷で完走しようなんて思ってない。
・・・!!!
なんてことだ!!
今、この瞬間!!!
この瞬間こそ、俺はウルトラマラソンの醍醐味を堪能している!!!

以前読んだ本で「300kmを不休で走り抜いたランナー」が語っていた。
「前半は足で、最後は心で走るんだ」

足はすでに使い切った。
残ったのは未だ折れていない心だけだ。
切れる寸前の糸のような心が、推進力を生んでいるのだ。
上等。
歩いてたまるか。
この葛藤こそがウルトラマラソン!!
きっとこの瞬間のために一日走り続けてきた!!
歩いてたまるか。
ここで歩いたら、この一日が台無しだ!
もうあとはなんでもいい。
とにかくゴールゲートまで走り抜けるのだ・・・

1421041131918

1421041128539
終わった。走りきった。
ゴールではYOMEと子供たちが待っていた。
先にゴールした仲間が待っていた。
僕はゲートから数メートル先の芝生に座り込んで、しばらく放心していた。
・・・そっか。終わったんだな。終わっちゃったんだな。
もう走らなくていいのか。

立ち上がれない僕の代わりに、YOMEが完走証をもらってきてくれた。
11時間15分。
去年から2時間7分のタイム更新。
上等だな。
「絶対歩かない」の誓いも守った。
KKB選手には抜かれなかった。
うん。上等だ。
去年の完走時には空は真っ暗で、胃が潰れてビールの一本も飲めなかった。
今年はまだ日が高いうちにゴールして、これから打ち上げで仲間たちと酒が飲める。
上等すぎるくらいかね。

10915220_689521401164854_3709779222774690208_n
宮古島最凶アスリートのガッツ選手は、裸足で9時間を切ったらしい。
裸足100kmランナーとしてはギネス記録に迫る結果らしい。
うむ。地球外生物と認定してもよいのではないだろうか。
こんな超人アスリートが身近にいて、気軽に酒を飲めるというのはすごいことなんだと思う。

苦しかった・・・実に苦しい一日だった。
そしてこんな楽しい一日もなかなかないだろう。
二度と100kmなんて走るものか。
・・・来年までは。

1421041114021
完走メダルは応援してくれた娘に。