ども。さっしーです。
今日も元気に理屈をいじってみたいと思います。

「ストライド重視の走り方は、怪我のリスクが高く、強靭な足腰が求められる」という理論が必ずしも正しくないと思う根拠について。
スポーツとしてランニングを学んだことのない子どもたち(小学校低学年かそれ以下)に全力走をさせてみるとしよう。
おそらく彼らの大半は、ストライド走で走るはずだ。
(誰でも、小学校のかけっこを思い出せば、心あたりがあるのでは?)
つまり、「全速力で走る」という意識は、足の回転数を上げるという行為よりも、歩幅を目一杯使い、跳躍で飛距離を伸ばすという行為につながるということ。
子どもというのはある意味で野生動物としての特性を残した人間だと思う。
大脳新皮質は発達途上で、それよりも本能に忠実な面が強い。
スポーツをさせたとき、子どもの動きは洗練されてはいないが、人間の本能はどんな動きをしようとしているのかは観察できる思う。
子どもは当然筋力も未発達なので、ストライド走が本当に強靭な筋力を必要とする走り方ならば、本能はそれを選ばないはずだ。

では、この「ストライド重視の走り方は、怪我のリスクが高く、強靭な足腰が求められる」という理論の根拠(というより、おそらく経験則)はどこからきたのか、僕なりに考察してみた。
ちょっと寄り道するが、お付き合いを。

僕は10代の頃の長期間、少林寺拳法の道場に通っていた。
まぁ親に無理やりやらされたのだが、中学生になってからは楽しくなって、真剣に取り組んでいた。
そして大学生の頃、1年弱の間、ボクシングジムに通った。
こちらは期間こそ短いが、真剣にプロを目指していたので、かなりの高密度だったと思う。
木っ端微塵に挫折して、プロ試験に臨むこともなかったのだが。

まあそんなわけで、東洋と西洋両方の格闘技にちょっとした見識があるわけだが、今更それを「体幹の使い方」という視点で分析してみた。

まず東洋の格闘技(いわゆる武道全般)は、身体の動きを「軸」で考える。
背骨を一本の軸として回るコマのようにして、末端である手足を円運動で加速し、突きや蹴りを繰り出す。
例えば、突きを打つ際には、下半身から始まった動きが、回転運動を経て徐々に大きく、加速しながら骨盤、肩甲骨を通し、拳を前方へ突き出す動きになる。
コマというか竜巻みたいなイメージか。
そして、一つの(あるいは一連の)アクションの前と後は静止する。
すべての「構え」は「静」がベースだ。

これに対して、ボクシングの動きは「リズムと反動」とでも言うべきか。
パンチの打ち方については、武道と共通点も多い。
(下半身から力を伝達することなどは同じ)
が、どうも軸の概念が曖昧だ。
背骨は前後左右にくねくねと動く。
ダッキングやスウェーバックのような動きは、武道にはない。
武道では基本的に使わない反動を多用する。
右ストレートに続く左フックは定番コンビネーションだが、これも右で溜めた力の反動を、左に乗せて打つ動作だろう。
このとき、軸の安定性よりも、体重移動の最適なバランスが重要となる。
ボクシングの構えは「動」。
常に軽くリズムを刻み、動きながら相手を牽制する。

違うという意見もあるかもしれないが、一応経験者の感想と思っていただきたい。
これをランニングに当てはめてみたい。

武道的な走り方をするならば、背骨は固定して、骨盤が地面と平行に回転することで推進力を得ることになるはずだ。
上級者であれば、肩甲骨の方でも平行な円盤運動をして、背筋群を通して推進力に加えることができる。
上半身の上下動は少なく、そのため着地の衝撃自体も小さい。
蹴り出しエネルギーのベクトルはまっすぐ前方。
これを体軸固定型走法と呼ぶことにする。


(相変わらず下手な絵で申し訳ない)

そして、ボクシング的な走り方をするならば、軸のことは忘れて、全身を使ってリズムを取ることになるのではないか。
着地と同時に全身がバネのように縮み、蹴り出しの際に伸びる。
人間は両足を対称に使う走り方をするので、背骨の両側に二本のスプリングが入っていて、左右交互に使うイメージだ。
(チーターなどの走り方は左右非対称で、左右の足の着地、蹴り出しのタイミングにはタイムラグがあるが、左右の背筋をほぼ同時に収縮させるようだ)
上半身の上下動が大きくなり、物理的な着地衝撃が大きくなるが、全身をバネのように使うので、衝撃は全身に分散される。
蹴り出しエネルギーのベクトルは、前方やや斜め上。
これを体幹伸縮型走法と呼ぼう。

日本人ランナーは、多分99%が体軸固定型で走っているのではないだろうか。
別にこの走り方が悪いわけではない(メリットもあるらしい)のだが、ストライドは伸びない運命にある。
無理して伸ばそうとすれば、関節の可動域をギリギリまで使う上に、「着地の衝撃が小さい」というメリットが半減して、怪我につながるのもうなずける。
(着地衝撃を下半身で吸収するため)
体軸固定型でストライドが伸びない理由のひとつは、エネルギーのベクトルではないだろうか。
遠投で飛距離を最大にする角度は45度だという。
ランニングの跳躍角度が45度になることはないだろうが、体軸固定型だと、角度が小さすぎて、物理的に遠くまで飛べないというのが大きいと思う。
日本の長距離界ではこれを誤解して、「上半身の上下動≒着地の衝撃≒悪」と解釈しているのだと思う。
これを体幹伸縮型の視点から見ると「上半身の上下動≒着地時のバネの溜め≒上方向への推進力≒ストライドアップ」となるのではないだろうか。
体幹収縮型では、スプリングが収縮するイメージで加速し、上方向のベクトルも加わるため、歩幅を無理に伸ばさずとも、跳躍によって無理なくストライドが伸びることになる。

前回から言いたかったところはここで、跳躍力があれば、足の長短はストライドに関係ないのだ。
もちろんストライド長の絶対値としては足の長いほうが有利だが、身長比に換算すれば、跳躍力が決め手になるはず。

ちなみに、まだ実験中で結論には早いのだが・・・
僕はこの体幹伸縮型でストライドを伸ばすという考えで練習をしていて、実際にストライドは10cmくらいは伸びている。
(元が小さいからねw)
まだまだ動きが洗練されていないので、ストライドは安定していないのだが、少なくとも足への負担は増えていない。
ビブラムで走っていて、足腰へのダメージの増加を感じないので、「全身に衝撃を分散する」という理屈は、そう違っていない気がする。
足裏に関しては、負担がかなり減ったと感じるくらいだ。
(いつも角質化してマメになっていた部分が、最近柔らかい)
引き続き人体実験を続けていきたい。

ちなみに、今回のフォーム改善と理論あれこれは、以下のブログから元ネタをいただき、自分なりの解釈、研究、実践をこうして書き留めている。
>>ランニング言いたい放題

ランニング関連の情報、Webページは星の数ほどあるが、このブログは非常に理にかなっていて、ぜひとも実践してみたいと思った次第だ。
具体的なトレーニング方法なども紹介しているので、興味のある方はぜひ参照していただきたい。

ではまた次回。