There is no spoon

ここがマトリックスの中であれば、文字通りだ。
シンプルだ。
スプーンは無い。
あるのは、スプーンを定義するプログラムだ。
プログラムに干渉できるのであれば、スプーンを瞬時にナイフに変えることもできるだろう。

だが、リアルではもう少し複雑だ。
スプーンは確かにあるだろう。
だが、あなたが思っているような在り方ではない。
スプーンは確かにあるが、その在り方はあなたのマインドが定義している。

僕の肉体は確かにここにあるだろう。
だが、その定義はマインドがしている。
この肉体は車より速く走ることはできないだろう。
だが、今自分が信じているよりは、ずっと速く、ずっと長く走れるはずだ。
マインドを上書きすることさえできれば・・・


メンタル8割?

・・・と、ある有名なウルトラランナーが言ってた。
うん、まぁそう言いたくなるよね、とか今まで思っていたが、先日のTOFR以来、これは例え話じゃなくて、単純な事実なのかもしれないと思うようになった。

TOFRから帰ってすぐに、病院で血液検査をしてもらった。
目的は、鉄欠乏性貧血の有無だ。
今まで色々仮説と検証をしてきたつもりだったが、つまるところ採血がイヤで逃げてきたのも事実。
病院も注射もキライww
でも検査すれば貧血かどうかは数日でハッキリするわけで。
結果・・・貯蔵鉄は十分。
過去しばらく、鉄不足だった可能性は皆無。
あの心配や苦労は何だったんだか。
毎日レバー食べてみたり、コーヒーやめてみたり。

極論すると、レース後半で息が苦しくなってたのは「気のせい」かもしれないってこと。
足が痛くて上がらないのも気のせい。
何もかも気のせい。
つまりメンタルの弱さ。
でもね、「気の持ちよう」とかで片付くほど簡単じゃない。
気のせいで苦しいってことはつまり、脳がもう走るなって指令を出してるってことだから。
これ以上やると身体が壊れるぞー、やめとけー、と言う代わりに、信号として苦痛を出す。
だから原因はメンタルの弱さであっても、苦痛自体はホンモノ。
実際に超イタイ。
でも、苦痛はメンタルの弱さが原因の危険信号に過ぎないと理解すれば、それをストップすることもできるような気がする。

TOFRの三日目、危険信号の向こう側がハッキリ見えた。
その領域は、苦しくなかった。
すごいハイテンションで、すごく楽しくて、気持ちよかった。
ウルトラマラソンでは「復活」が定番だ。
一度動かなくなった足が復活して、また走れるようになるのだが、それとも全く違う。
復活は自然と起きるのを辛抱強く待つしか無いが、アレは自分で引き起こした。
覚醒、とでも呼ぶことにしよう。
自分で起こせるということは、再現可能ということで、練習でも使えるということだ。
まぁ覚醒の前段階の疲労度まで追い込むのは通常練習では難しいと思うが。
(しょっちゅうやってたら、ケガだらけだ)
来月のストロングマンで試せるかな。
楽しみだ。


TOFR 2017 3rd stage

2nd stage はこちら

スマホのアラームで夢が中断された。
覚えていないが、気持ちのいい夢だった。
ぼんやりとスマホの画面を眺めると、時刻は4時半。
それですべて思い出した。
自分がこれから戦場に出なければならないことを。
うらめしい気分にはなったが、昨日のようにスタートを迷いはしない。
きっとゴールしてやる。

今日はチェックアウトなので、部屋を散らかして出かけるわけにはいかない。
今日使うものを選び、パッキングし、走る準備を整える。
スタートのムードは昨日と変わらない。
致命的な体調不良で棄権する選手が数名。
多くは辛いね-、痛いねーと話しながらもどこか楽しそう。
ノダ氏は「ヒザが真っ直ぐに伸びなくなっちゃった」と言いながらも走る気満々だ。
「作戦なんて無いよ-、いけるとこまでいくだけさ。半分まで行けないとは思うけど」
まぁ僕も同じだな。
でも最後まで行きたい。

昨日に比べれば体調はずっとよかったが、例の貧血のような症状が怖かったので、ゆっくりゆっくり走り始めた。
やはり、走り出すとすぐに息苦しくなる。
そして次は腹筋が痛い。
痙攣まではしないが、地味に、ねちねちとくる、嫌な痛み。
フォームを整え、腹式呼吸を意識して、少しでも痛みの少ない走り方を探しながらゆっくり進む。

10kmほど進んだ。
往路ではあれほど長かった名護浦湾もすぐに通り過ぎた。
ほんとに人間の体感時間というのは実際の時間とは違うようだ。
今日の距離は68km。
もう1/7も来た!
国道の青看板はすでに「那覇58km」などと言っている。
行けるかも知れない!

だが結局、次の10kmで心も体も折れてしまった。
息が続かない。
いよいよ足が痛い。
やはり3日目となると、少々体調が回復しても、蓄積した疲労が膨大なのか。
このステージをゴールするためには、キロ8.5分くらいがリミットだ。
序盤で多少の貯金があるが、それもほぼ使い切った。
ここから先、キッチリ8.5分ペースで行けるはずはない。
なにしろ今のペースはキロ12分。
それもさらに落ちそうだ。

後ろから、のんびりペースのおじさんが近づいてきて、笑顔で話しかけてきた。
どうやらこのレースを完走した経験もあるらしい。
だが、昨日の2nd stageは完走できず、今日もこのペースなら投げてるに違いない。
そしてなんと、僕と同じ高校を卒業しているようだ。
15年上のセンパイにこんなところで、こんな風に出会うとは!
何にせよ、歩きのお供がいるのはありがたいことだ。
他に歩きの選手が何人かいたが、歩くペースが速く、僕らよりずいぶん先に行ってしまい、そのうち見えなくなってしまった。
センパイは相変わらず僕に合わせているのか、ずっと横にいる。

果てしなく長く思えた歩きの道のり。
コースの半分、34km地点のエイドが見えた。
心身共に限界だ。
今日のゴールはここだな。
最後までいけなかったなぁ。
ノダ氏の姿が見えないってことは、彼は先に進んだんだろうな・・・

僕がアスファルトに座り込んで、スポーツドリンクを片手に打ちのめされているとき、
センパイは軽食を食べながら、オレンジのパーカーを着たエイドのおばさんと楽しそうにしゃべっていた。
それまで何を話していたか聞いていなかったが、突然センパイがおかしなことを言い始めた。
「あれー?ここからキロ6分で走ればさ、ゴールできるはずだよね!?それってカッコよくない!???」
「はいはい、そりゃカッコイイけど、今でも十分カッコイイよ!」
エイドのおばさんも、またこの人はテキトーなことを・・・みたいな感じで受け流している。
はは、、、それができれば苦労しませんよ。
できないから今まで12分ペースで歩いてきたんでしょ。
残り34キロで、制限時間は4時間弱。
半分来るのに6時間かかったところを、疲労を抱えた残り半分を4時間で!
でもまぁそれを口にしただけでもすごい勇気だね。

「よし決めた!俺、やっちゃうよ!」
センパイはリュックサックをおばさんに、よろしく、といって渡すと、颯爽と走り去っていった。
明らかにゴールするつもりの走りだ。
僕はしばらくあっけにとられてその後ろ姿を見ていたが、すぐに見えなくなった。
センパイ・・・マジかよ・・・ここで座り込んでる自分は何て滑稽なんだ・・・
おばさんがクリームパンを持ってきてくれた。
「大丈夫?車に乗る?」
・・・
「わかりません、ちょっと休んで、食べてからもう一度考えますね」
クリームパンを食べて脳に糖が回ったのか、意識がはっきりしてきた。
同時に、自分の中で何かが切れた。
「僕も行きます。あの、これ頼んでもいいですか?」
僕はおばさんにリュックを渡した。
厳密には、荷物をエイドで預けるのはNGだろう。
だがすでに二日目にリタイアして順位の残らない僕には構うまい。
リュックには、お金、飲み物、雨具、スマホ、地図が入っている。
どれも必需品だ。
僕は500円玉を一つだけスパッツに押し込んで走り出した。
もうトボトボ行くのはヤメだ。
どうせリタイアするなら、燃え尽きてやる。
次のエイドまで7km、普段なら完全無補給で当たり前、500円あれば十分!!
例え行き倒れても、ここは国道、人知れず死ぬことはない!

まったく人間の精神は神秘的だ。
ペースは6分半!
ギリギリゴールに間に合うペースだ。
先行していた歩きの選手たちが、びっくりしている。
「大丈夫なの!?」
「もうヤケクソなんですよ!!死ぬつもりで行くことにしました!!」
あっという間に7kmを走りきり、次のエイドにたどり着いた。
足がガクガクして、心臓が口から出てきそうだ。
道の駅の石のベンチに腰を下ろすと、エイドスタッフが炊きだしの沖縄そばを出してくれた。
これはありがたい。
飲み物コーナーにはお茶やスポーツドリンクに混ざって、ビールが冷えている。
そうだ、ここは往路で初めてビールを飲む選手を見て驚いたエイドだ・・・
「よかったらビールもあるからね」
エイドスタッフがニヤニヤしながら言った。
「一本ください!」
もうとっくにヤケクソなのだ。
アルコールにには沈痛作用がある。
もちろん、スポーツには危険な多数の副作用と一緒に。
だが今、そんな常識や良識がなんだろう。

そばを食べ、ビールとお茶を飲み干すと、また走り出した。
次のエイドは17.5km先だ。
無理だ。
でも先の7kmで自分は燃え尽きなかった。
だからまだ進むのだ。
9km走ったらコンビニでこの500円を使って補給をして、エイドまで持たせるのだ。

走り続け、だんだんペースも落ち、6分台は保てなくなった。
もうゴールは無理だろう。
だが・・・・・何て気持ちいいんだ!!
自分にこんな力があったなんて、本当に知らなかった!!
まるで生まれ変わったようだ!!
きっと、これが超ウルトラの世界!
ここの選手たちの生きる世界!
身体は辛くても、笑いがこみ上げてくるようだ。
センパイ、ありがとう。
貴方は最高の置き土産をくれました。

6kmほど走ったところで、喉の渇きがきつくなってきて、コンビニに入った。
スポーツドリンクとサンドイッチを食べ、また走り出す。
残り170円。
11km持たせなければ。
空は晴れ、太陽が照りつける。
3月の沖縄は、日が出ればかなりの暑さになる。
そんな状況すら、なんだかおもしろおかしく思える。

さらに6kmほど走り、自販機で最後の飲み物を買う。
残り10円だ。
のんびり歩いていたら干からびる。
いよいよ身体は動かなくなってくるが、先の「大復活」の経験が勇気をくれる。
信号で止まるときは、日陰を見つけて座り込む。
だが信号が青になれば立ち上がり、横断歩道でスイッチを入れる。
「ワン、ツー、スリー、それっ!!!」
体重を前に乗せ、腕だけ振り出せば、足が動き出す。
身体を信じているから、動き出せる。
すごい、まだ動くんだ、こんなになっても、まだ動くんだ!

そしてついに、17.5kmをワンコインで走り抜き、エイドに到着した。
最終制限時間まで残り20分。
残りの距離は約10km。
3rd stage、完走はできなかったなぁ。
でも気分は最高だ。
最高の経験だった。
きっと次は完走できる。
壁の向こうは見えた。
というか、最初から壁なんてあったのか?

ノダ氏は完走したらしい。
しかも8位、上位に食い込んだ。
恐るべきガッツだ。
センパイも時間内に完走したらしい。
センパイ、貴方は変な人ですが、僕のヒーローです。

こうして大会は幕を下ろし、選手たちは傷ついた身体を引きずって、静かに帰路へ・・・付くはずもなく。
シャワーを浴びたら、向かう先は打ち上げ会場。
貸切の居酒屋で、飲んで食って大騒ぎ。
お店は厨房が追いつかず、ビールサーバーはノンストップ。
挙げ句、退店後は
「シメのステーキ食べに行く人はこっちねーー!」と・・・
最後の最後まで、僕らの常識をひっくり返してくれました。

素晴らしい出会いと素晴らしい経験をありがとう。
また来年、変態レースで会いましょう。
もっと強くなって、また会いましょう。
ありがとう、ありがとう。


TOFR 2017 2nd stage

1st stage はこちら

4時50分にスマホのアラームが鳴った。
明け方(今も明け方だが)に少し眠れたような気がする。
汗が噴き出したかと思えば突然冷えてきたり、寝返りを打つ度に変なところが痛んだり。
だがとにかく時間だ。
1時間ほどでレースが始まる。
今日の完走はあり得ないだろう。
それでも走り出すのか。
それとも修羅場のことは忘れて、この温かいベッドで今度こそゆっくりと心ゆくまで眠るのか。

・・・決められない。
情けないが、少しでも決断を保留しながら、それでもできる準備はしてみる。
昨日買ったおにぎり、オレンジジュース。
見るだけで吐き気がする。
水は飲めた。
シューズはグショグショだが、予備を用意してある。
昨日の終盤激痛だった股擦れは、寝る前に軟膏を塗ったおかげか、だいぶよくなっている。
足の小指が水ぶくれになっているが、筋肉はおおよそ無事なようだ。
死ぬかと思った動悸と息切れは、とりあえず落ち着いている。
うむ、今致命的なのは、胃か。

いつの間にか、走る準備が整っていた。
ああ。うらめしい。
結局走るのか。
集中治療室のドアを開けたら戦場・・・なんてね・・・

ホテルの前に集まった選手たちは、何かしらの体調不良を訴えながらも、おおよそ笑顔だった。
昨日お腹を壊した選手は、今日は棄権するが明日は走るつもりらしい。
熱中症やら血尿やらを昨日経験した選手もいるようだ。
ノダ氏は傷めているヒザがやはり辛いようだ。
ふふ。なんとかスタートラインに立ててよかった。
そうでなければこの先しばらく、ノダ氏に負い目を感じるところだ。

6時、スタート。
やはりトップレベルの選手を除けば、歩き出すようなスタート。
僕は真っ直ぐ例のコンビニに入ったので、完全に最後尾スタートになった。
買いたかったのはスポーツドリンクとソルマック。
二日酔いのときに飲む、小瓶に入ったアレだ。
症状がほぼ同じだから効くはずだ。

700m走って、300m歩く。
走るといっても、生気無くズルズルと移動しているような感じだ。
700m走って、300m歩く。
それでも何人かの選手を抜いた。
苦しいのは自分だけではない。
7.4kmに最初エイドがあった。
すでに何十キロも走った気分だ。
ノダ氏が何か食べている。
彼も今日は完走できるとは思っていないようで、それでもいけるところまで行くつもりようようだ。
僕もエイドのスタッフに軽食を勧められたが、お断りした。
まだ食べ物をみると吐き気がする。
ふらーふらーと先の見えぬ道へ出発する。

いつの間にか、700m走ることはできなくなった。
例の息切れが戻ってきた。
頭の中がぼーっとして、視界に薄い霧がかかったようだ。
酸欠だろうか?低血糖だろうか?
先に抜いた選手たちが再び僕を抜いていった。
最初から歩き通す作戦だったようだ。
ああ。なるほど。その方が早かったりするんだ・・・
小雨を避けてバス停の屋根の下で寝転んだ。
灰色の空を見上げて、自分は何をやってるんだろうとぼんやり考える。
ああ、わからん。
人生って何なんだろう。
倒れるためだけに歩き続けるのか・・・

何がしたいのかもよくわからないまま再び立ち上がり、とぼとぼ歩く。
オキヤマさんがマイクロバスで近づいてきて、僕の横で減速した。
「マエダさーん、大丈夫?乗っていくかい?」
僕のことは昨日の一件ですっかり覚えてもらったらしいw
「え・・?ああ、大丈夫です。まだいけます」
おいおい、何言ってんだよ、おれ・・・
ここは乗るとこだろーが・・・
「オッケー、じゃあ次のエイドで待ってるから!がんばって!」
ああ・・行ってしまったじゃないか。。。

もう折り返しの辺戸岬にも到着することはないだろう。
いったい自分の今日のゴールはどこなんだ?
どうがんばっても・・・あと10キロか20キロじゃないか?
それまでに回収バスに収容されるはずだろう??
そうか、あと10キロか20キロでゴールなのか。
目標が見えてきた。
回収されるまでがんばろう。

コンビニで初めて食料を買った。
胃薬が効いてきたのか、少し食欲も出てきた。
こういうときは、理屈ではなく、見たときに食欲を感じるものを選ぶことにしている。
本能を信じるというか。
(昨日そうやってカレーを選んだのはかなり微妙だったが)
レンジで作るお茶漬け。
これが旨かった。
久しぶりの食料が身体に染みる。
さあ、歩こう!終わりが来るまで!

次のエイドまで残り2kmぐらいだった。
オキヤマさんが再びマイクロバスで通りかかった。
「マエダさーん、大丈夫~?」
「はい、大丈夫です!とりあえず次のエイドまで行きます!」
「オッケー、じゃあそこで今日は終わりにしようね!だいぶ時間も過ぎてるから」
「わかりました、じゃあエイドで!」

ああ、救われた。
少なくとも僕は自分から投げ出さなかった。

マイクロバスはまっすぐホテルに向かった。
乗っているのは僕だけ。
例の歩き通す作戦の選手たちは、あのエイドからさらに先に進んだようだ。
かなわんなぁ。
道中、オキヤマさんの話をいろいろ聞いたが、ホントにスゴイ選手だ。
もちろん、今回は運営者なのでサポートに徹しているが、それも元々、走ることが死ぬほど好きで、それをみんなと共有したくて企画を始めたらしい。
だから大会の利益もゼロだ。
人としても選手としても、まったく尊敬する。

ホテルに戻り、ゆっくり風呂に入り、コンビニの軽食と、買い足したソルマックを飲む。
夕食はしっかり食べられそうだ。
明日は完走するぞ・・・

そのまま寝落ちしたらしい。
気づいたら何時間か経っていた。
ノダ氏も、僕より10kmくらい先で回収されたらしい。
久しぶりにマトモなものを食べよう、と外食に出た。
語り合うことはだいたい、この大会の選手たちのレベルの高さだ。
60代の選手もいる。
見た目フツーのおばちゃんなんかもいる。
だがそのメンタリティは鋼のようだ。
尖ってはいない。
人を威圧したりもしない。
ただただ、芯が強い。
2人とも二日目にして完走は消えてしまったが、リベンジを誓った。
自分たちの知っていた世界は狭かった。
この選手たちと同じ世界で、もっと自分を試してみたい!

ホテルで洗濯を済ませ、翌日の準備(もうチェックアウトなのだ)を整え、早めにベッドに入った。
レースの前日はたっぷり休めるのが当たり前だと思っていた。
「早めに寝る」がこれほどありがたいことだったとは!!

3rd stage へ


TOFR 2017 1st stage

ども。お久しぶりです。
約1年ぶりにこのブログを解凍する気になりましたww

TOFR(trans Okinawa foot race : 沖縄一周マラソン)、超楽しかったです。
これまで100kmまでしか・・・そう、終わってしまえば、ホントに「しか」と思うわけですが、100kmまでの大会とは完全に別の世界です。
これは何を言っても何を書いても、その場にいなければ伝わらないことなのですが、それでも少し書いてみたいと思います。

レース概要:
3日間に渡るステージ制レース。
1日毎にゴールと制限時間が設けられており、完走できないステージがあっても、続きを走ることができる。

1st stage 那覇~喜屋武岬(きゃんみさき)~名護 約104km 16時間
2nd stage 名護~辺戸岬(へどみさき)~名護 約98km 16時間
3rd stage 名護~那覇 約68km 10時間

エイドステーションは「少しだけある」
間隔にばらつきがあるが、10kmに一個あるかないか、という感じ。
エイドに頼ろうという選手はまずいないが、あれば確かに助かる。
基本的にはコンビニ補給。

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5:00am
スタート会場のホテルで受け付け、競技説明。
これから3日間のサバイバル、戦場に向かう兵士よろしく張り詰めた空気・・・なんてことは全然なく、まるで同窓会のような雰囲気。
初参加の選手は僕らを含めてほんの数人、だいたい顔見知りらしい。
マニアックな競技だし、狭い世界なんだろう。
落語家さんがルートの注意点など話しているのだが、100km以上のコースを口頭で説明されてもちんぷんかんぷんだ。
わかったことは、序盤、喜屋武岬までの約18kmは、道に迷いやすいから、他の選手について行け、ってことか。
地図も配られたが、多分スマホのほうが役に立つだろう。

6:00am
那覇の市街地の真ん中で、50人の選手が一斉にスタート。
選手たちはみんな県外からの遠征、僕とライバルのノダ氏だけが県内(離島だけど)。
だから家族の応援も少ない。
静かなスタートだ。
トップレベルの選手たち以外は、だいたいゆっくりな走り出し。
ちょっとそこまでジョギングに~~みたいな雰囲気。
走り出すとすぐに空が白み始めて、車がビュンビュン通り過ぎる国道沿いを一路南へ。

さて、書きたいことはいろいろあるけれど、何せ先が長いので、端折っていきます。
時刻もあまり重要でないので、飛ばします。

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約18km地点、喜屋武岬に到着。
沖縄本島最南端。
順位は半分より少し上だろうか。
僕もかなり遅く遅くと意識しながら走っているが、それ以上にのんびりな選手が多い。
なにしろ先が長い。
初日は前哨戦、二日目以降を考えると、時間をめいっぱい使ってもいいから、無傷でゴールしたいのだ。
・・・が、若干体調が気になる。
おおよそは普段通りなのだが、少し・・・ほんの少し、息苦しいように感じるのだ。
なんか、薄いマスクを付けて走っているような。
まぁ気にしてもどうにもならぬ。
始まってしまった以上、走るのみ。
ここで折り返して、真っ直ぐ名護へ!

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そして帰ってきた那覇。
約36km。
なんか・・・意外と疲れたぞ。
先行き怪しいなぁ。
国道の青看板には「名護 65km」
見るな見るな、先を考えてはならぬ。

それにしても、那覇は信号が多い。
ただでさえゆっくり走っているのに、信号で止められていると若干焦る。
ここまでの平均ペースは、キロ8分くらい。
普段のジョギングで6分くらいだから、超スローペースだ。
平均ペースとしては構わないのだが、後半さらに失速したら・・とか少し心配になる。

まぁ初日は心身ともにフレッシュな状態でのウルトラマラソン。
翌日以降のプレッシャーを除けば、知っている世界だ。

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嘉手納に到着。
そろそろ半分来たくらいか。
前方を行くオレンジは、ライバルのノダ氏。
お互い、このレースでは唯一の知り合いなのだが、偶然ペースが一致したときしか併走しない。
僕もかなり個人主義で群れるのがイヤなタイプではあるが、彼はもっと際立っている。
併走してるときも、ポツリポツリと言葉を交わす程度。
というか、普段もあまり多くはしゃべらない。
それでもこんなマニアックな趣味を共有しているという連帯感は得がたいものだ。
ノダ氏はレース前からヒザが不調らしく、違和感を訴えていた。
が、「壊れたとしてもレースは走る!」とのこと。
世の競技者やドクターが聞いたら顔をしかめるだろうが、この超ウルトラとでもいうべき業界では、当たり前のメンタリティだということを、後に思い知ることになる。

62.8kmのエイド、道の駅喜名番所。
市街地を抜けて、だいぶ好きな雰囲気になってきた。
はぁ、一息つきましょ。
と何人もの選手がベンチに腰掛け、用意された軽食と・・・ビール飲んどる!!!??
しかもビールはエイドで用意したですと!???
わ・・・わけがわからん。
そんな大会あるのか!?
「それ何本目?」
「いやぁ、4本目だったかな?」
「佐渡(のウルトラ)で俺が飲んだ19本の記録を更新してよw」
何の自慢だ??
でも彼らは昨日今日マラソン始めた連中とはわけが違う。
百戦錬磨の超ウルトラランナーだ。
うむ。常識を改めるのはこちらの方かも知れない。

残りの距離が30kmを切ったあたりから、かなり苦しくなってくる。
おかしい。こんなところで苦戦していたら、明日以降ダメだぞ。
とは言え、苦しい現状は受け入れるしかない。
時々出会うノダ氏も苦しそうだ。
ヒザが、、ヒザが、、と言っているが、ずっと前からそうだった気もする。
コンビニでお気に入りのエナジードリンク「Monster 緑」を買う。
一瞬疲れや痛みが吹き飛ぶので、ウルトラ後半で愛用しているのだが、2本目以降は気持ちが悪くなるのが難点だ。
できれば80km以降まで残しておきたかった。

残り20km。
足は平気だ。
最近多かった、太ももの筋肉痛で足が上がらなくなる症状は出ていない。
だが、息が苦しい。
貧血だろうか。
そういえば最近、「お茶やコーヒーを減らしてレバーを食べる」のをサボってたな。
息が苦しいせいか、全身の倦怠感も足を鈍らせる。
制限時間には余裕がある。
一定のペースを保つため、2kmの内で300mを歩くという作戦を立てる。

残り10km。
300m歩いて700m走るのがやっと。
あたりはもう暗くなった。
ああ、完全にアカンパターンに嵌まってしまった。
何が悪かっただろう?
何が悪かったにしろ、済んでしまったことだが。
とにかくゴールせねば。

もうあと数kmで次のエイド・・というコンビニで休んでいたところ、後から苦しそうに歩いて来た選手がいた。
「次のエイドで・・・リタイヤしようと思うんです」
と。
「実は、数日前に高熱が出て、なんとか落ち着いたばかり、まだ微熱は続いてるんですよね・・・
ここまでだましだまし来たんですが、ついに内臓がおかしくなったみたいで、酷い腹痛が・・・」
だましだましで90km以上も走れますかね・・・
あまりに苦しそうなのでタクシーで次のエイドまで行ったらどうかと聞いてみた。
国道沿いなので、流しタクシーは探すまでもない。
「いえ・・・自分もウルトラランナーの端くれなので、コース上でタクシーに乗るのはさすがにちょっと・・・」
まったく恐れ入る。
足がフレッシュでも、腹痛を抱えて歩く数キロは地獄そのものだ。
僕の不調などいかほどのものだろう。
僕も吐くのを覚悟で4本目のエナジードリンクを流し込み名護浦湾へ。

この名護浦湾は、去年のNAGOURAマラソンでも走った。
同じようにコースの最終ルートで、90km以上走った後だった。
弧を描く海岸線、その海の遥か向こうに街の明かりが輝いている。
見えているが故に辛い道だ。
走れど歩けど、光は近づいてこない。
気持ちが悪い。
完全に胃をやられたらしい。
動悸が収まらず、歩いていても息がゼイゼイする。

残り5km
名護市街地を歩く。
ベテランのU選手と一緒になった。
彼も歩いているが、バテている様子はないので、作戦だろう。
僕を心配してくれたのか、ゴールまで一緒に歩こうと行ってくれる。
酷い体調でネガティブループに墜ちていくところだったので、まったく救われた。
そしてここでまさかのスコール。
急いでカッパを取り出したものの、過去なんどかウルトラで経験した低体温の恐怖が蘇る。
大丈夫、今回は残り距離が短い。
低体温になる前に終わるはず・・・

残りの距離はGPSのデータで予測していたよりも長かった。
U選手がいなかったら、ヤバかった。
ようやく今日のゴール兼宿泊先のスーパーホテルが見えた。
危なかった・・・でもなんとか初日リタイアは避けたな。
見ればホテルの脇にコンビニもある。
制限時間まであと20分くらいあるから、コンビニで夕食と朝食を買ってからゴールすることにした。
が、コレがまずかった。
コンビニの店内はなんと冷房ガンガン!
疲労困憊ズブ濡れの身体は一瞬で体温を失い、震えが止まらなくなってしまった。

ゴール自体は問題なかったものの、部屋に入ってからは恒例の低体温地獄。
低体温の恐ろしいところは、明らかに身の危険を感じるのに、身体がどんどん動かなくなっていくこと。
苦しくても、動ける内に身体を温める準備をしなければどうなることかわからない(死ぬのか?)
とにかくユニットのバスルームに入って、服を着たまま熱いシャワーをザブザブ浴び、その湯をそのままバスタブに溜める。
全身が湯に浸かるころ、死の恐怖は去った。
ああ、そうだ、服着たままだ・・・まずは靴下を脱ごう・・・
バスタブの中で左足に手を伸ばした瞬間、腹筋が痙攣した。
痛い!!腹をみると、腹筋にピンポン球みたいな塊ができてピクピクしている。
なんとか背中を反らせて痛みの引くポイントを見つけ・・・靴下に手を伸ばしてまた痙攣。
まったく滑稽なひとり遊びのようだ。
服を脱ぎ終わるのに何度これを繰り返したことか。

風呂を上がっても油断するとまたすぐに体温が下がるので、布団にくるまって横になる。
気持ちが悪い。呼吸が苦しい。動悸がする。
いや・・ホントに苦しい。死ぬのか??
きっと貧血がヒドイことになったんだ。血が黄色くなってるんじゃないのか。
酸素・・・酸素が足りない。
そうだ、運営に頼めば簡易酸素くらい貸してもらえるかもしれない。
ケータイに手を伸ばして、代表者のオキヤマさんにそれを伝えてみた。
「よし、すぐに買ってもっていってあげるから!」
ああ、わざわざ買ってまで・・・でも遠慮してる場合じゃないしなぁ・・・
あ、そうだ、YOMEにもいい方法がないか聞いてみよう。
看護職だからいいアドバイスくれるかもしれない。
LINEで相談したところ、「過呼吸じゃないの?」とのこと。
よくわからん。
酸欠なのか、過呼吸なのか、両方ってことはありうるのか??
だが酸素が届くまでの間、言われたとおりタオルを口に当ててゆっくり呼吸をしてみたところ、少し息が楽になってきた。
それからすぐにオキヤマさんが酸素を持ってきてくれた。
当然だが医療用ではなく、簡易的な薬局で買えるヤツだ。
早速それも試してみた。
あまり楽になった実感はなかったが、脇で見ていたオキヤマさんは「おお、すっと血の気が戻ったよ!さっきまで青白い顔してたからね!」と。
「また何かあったら電話してね。酸素はもう一本置いていくね」
言い残してオキヤマさんは出て行った。
まぁ・・・貧血なのか過呼吸なのかよくわからんけど、峠は越えたっぽい。
起き上がってコンビニで買ったカレーを一口食べてみたが、やはりダメだ。
胃が荒れて、スプーン二杯が限界だった。
その後、トイレで二回吐いた。

あと6時間ほどで、次の100kmに旅立たねばならない。
正気ではない。
だが、今日会った選手たち、彼らならどうするだろう。
前の夜に、明日は走らない、なんて言うだろうか。
そうか、スタートラインに立つ前に、すでにメンタリティで負けてたんだな。
これが超ウルトラの世界なのか・・・
まぁ明日のことは明日考えよう。
今は休むしかない・・・

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