ども。お久しぶりです。
約1年ぶりにこのブログを解凍する気になりましたww

TOFR(trans Okinawa foot race : 沖縄一周マラソン)、超楽しかったです。
これまで100kmまでしか・・・そう、終わってしまえば、ホントに「しか」と思うわけですが、100kmまでの大会とは完全に別の世界です。
これは何を言っても何を書いても、その場にいなければ伝わらないことなのですが、それでも少し書いてみたいと思います。

レース概要:
3日間に渡るステージ制レース。
1日毎にゴールと制限時間が設けられており、完走できないステージがあっても、続きを走ることができる。

1st stage 那覇~喜屋武岬(きゃんみさき)~名護 約104km 16時間
2nd stage 名護~辺戸岬(へどみさき)~名護 約98km 16時間
3rd stage 名護~那覇 約68km 10時間

エイドステーションは「少しだけある」
間隔にばらつきがあるが、10kmに一個あるかないか、という感じ。
エイドに頼ろうという選手はまずいないが、あれば確かに助かる。
基本的にはコンビニ補給。

17350073_635689516620039_2005332014963709012_o

5:00am
スタート会場のホテルで受け付け、競技説明。
これから3日間のサバイバル、戦場に向かう兵士よろしく張り詰めた空気・・・なんてことは全然なく、まるで同窓会のような雰囲気。
初参加の選手は僕らを含めてほんの数人、だいたい顔見知りらしい。
マニアックな競技だし、狭い世界なんだろう。
落語家さんがルートの注意点など話しているのだが、100km以上のコースを口頭で説明されてもちんぷんかんぷんだ。
わかったことは、序盤、喜屋武岬までの約18kmは、道に迷いやすいから、他の選手について行け、ってことか。
地図も配られたが、多分スマホのほうが役に立つだろう。

6:00am
那覇の市街地の真ん中で、50人の選手が一斉にスタート。
選手たちはみんな県外からの遠征、僕とライバルのノダ氏だけが県内(離島だけど)。
だから家族の応援も少ない。
静かなスタートだ。
トップレベルの選手たち以外は、だいたいゆっくりな走り出し。
ちょっとそこまでジョギングに~~みたいな雰囲気。
走り出すとすぐに空が白み始めて、車がビュンビュン通り過ぎる国道沿いを一路南へ。

さて、書きたいことはいろいろあるけれど、何せ先が長いので、端折っていきます。
時刻もあまり重要でないので、飛ばします。

17362835_635742919948032_3327332153104720950_n-(1)

約18km地点、喜屋武岬に到着。
沖縄本島最南端。
順位は半分より少し上だろうか。
僕もかなり遅く遅くと意識しながら走っているが、それ以上にのんびりな選手が多い。
なにしろ先が長い。
初日は前哨戦、二日目以降を考えると、時間をめいっぱい使ってもいいから、無傷でゴールしたいのだ。
・・・が、若干体調が気になる。
おおよそは普段通りなのだが、少し・・・ほんの少し、息苦しいように感じるのだ。
なんか、薄いマスクを付けて走っているような。
まぁ気にしてもどうにもならぬ。
始まってしまった以上、走るのみ。
ここで折り返して、真っ直ぐ名護へ!

17239953_635802939942030_7259530186087516687_o

そして帰ってきた那覇。
約36km。
なんか・・・意外と疲れたぞ。
先行き怪しいなぁ。
国道の青看板には「名護 65km」
見るな見るな、先を考えてはならぬ。

それにしても、那覇は信号が多い。
ただでさえゆっくり走っているのに、信号で止められていると若干焦る。
ここまでの平均ペースは、キロ8分くらい。
普段のジョギングで6分くらいだから、超スローペースだ。
平均ペースとしては構わないのだが、後半さらに失速したら・・とか少し心配になる。

まぁ初日は心身ともにフレッシュな状態でのウルトラマラソン。
翌日以降のプレッシャーを除けば、知っている世界だ。

17358892_635897329932591_6608524190018287795_o

嘉手納に到着。
そろそろ半分来たくらいか。
前方を行くオレンジは、ライバルのノダ氏。
お互い、このレースでは唯一の知り合いなのだが、偶然ペースが一致したときしか併走しない。
僕もかなり個人主義で群れるのがイヤなタイプではあるが、彼はもっと際立っている。
併走してるときも、ポツリポツリと言葉を交わす程度。
というか、普段もあまり多くはしゃべらない。
それでもこんなマニアックな趣味を共有しているという連帯感は得がたいものだ。
ノダ氏はレース前からヒザが不調らしく、違和感を訴えていた。
が、「壊れたとしてもレースは走る!」とのこと。
世の競技者やドクターが聞いたら顔をしかめるだろうが、この超ウルトラとでもいうべき業界では、当たり前のメンタリティだということを、後に思い知ることになる。

62.8kmのエイド、道の駅喜名番所。
市街地を抜けて、だいぶ好きな雰囲気になってきた。
はぁ、一息つきましょ。
と何人もの選手がベンチに腰掛け、用意された軽食と・・・ビール飲んどる!!!??
しかもビールはエイドで用意したですと!???
わ・・・わけがわからん。
そんな大会あるのか!?
「それ何本目?」
「いやぁ、4本目だったかな?」
「佐渡(のウルトラ)で俺が飲んだ19本の記録を更新してよw」
何の自慢だ??
でも彼らは昨日今日マラソン始めた連中とはわけが違う。
百戦錬磨の超ウルトラランナーだ。
うむ。常識を改めるのはこちらの方かも知れない。

残りの距離が30kmを切ったあたりから、かなり苦しくなってくる。
おかしい。こんなところで苦戦していたら、明日以降ダメだぞ。
とは言え、苦しい現状は受け入れるしかない。
時々出会うノダ氏も苦しそうだ。
ヒザが、、ヒザが、、と言っているが、ずっと前からそうだった気もする。
コンビニでお気に入りのエナジードリンク「Monster 緑」を買う。
一瞬疲れや痛みが吹き飛ぶので、ウルトラ後半で愛用しているのだが、2本目以降は気持ちが悪くなるのが難点だ。
できれば80km以降まで残しておきたかった。

残り20km。
足は平気だ。
最近多かった、太ももの筋肉痛で足が上がらなくなる症状は出ていない。
だが、息が苦しい。
貧血だろうか。
そういえば最近、「お茶やコーヒーを減らしてレバーを食べる」のをサボってたな。
息が苦しいせいか、全身の倦怠感も足を鈍らせる。
制限時間には余裕がある。
一定のペースを保つため、2kmの内で300mを歩くという作戦を立てる。

残り10km。
300m歩いて700m走るのがやっと。
あたりはもう暗くなった。
ああ、完全にアカンパターンに嵌まってしまった。
何が悪かっただろう?
何が悪かったにしろ、済んでしまったことだが。
とにかくゴールせねば。

もうあと数kmで次のエイド・・というコンビニで休んでいたところ、後から苦しそうに歩いて来た選手がいた。
「次のエイドで・・・リタイヤしようと思うんです」
と。
「実は、数日前に高熱が出て、なんとか落ち着いたばかり、まだ微熱は続いてるんですよね・・・
ここまでだましだまし来たんですが、ついに内臓がおかしくなったみたいで、酷い腹痛が・・・」
だましだましで90km以上も走れますかね・・・
あまりに苦しそうなのでタクシーで次のエイドまで行ったらどうかと聞いてみた。
国道沿いなので、流しタクシーは探すまでもない。
「いえ・・・自分もウルトラランナーの端くれなので、コース上でタクシーに乗るのはさすがにちょっと・・・」
まったく恐れ入る。
足がフレッシュでも、腹痛を抱えて歩く数キロは地獄そのものだ。
僕の不調などいかほどのものだろう。
僕も吐くのを覚悟で4本目のエナジードリンクを流し込み名護浦湾へ。

この名護浦湾は、去年のNAGOURAマラソンでも走った。
同じようにコースの最終ルートで、90km以上走った後だった。
弧を描く海岸線、その海の遥か向こうに街の明かりが輝いている。
見えているが故に辛い道だ。
走れど歩けど、光は近づいてこない。
気持ちが悪い。
完全に胃をやられたらしい。
動悸が収まらず、歩いていても息がゼイゼイする。

残り5km
名護市街地を歩く。
ベテランのU選手と一緒になった。
彼も歩いているが、バテている様子はないので、作戦だろう。
僕を心配してくれたのか、ゴールまで一緒に歩こうと行ってくれる。
酷い体調でネガティブループに墜ちていくところだったので、まったく救われた。
そしてここでまさかのスコール。
急いでカッパを取り出したものの、過去なんどかウルトラで経験した低体温の恐怖が蘇る。
大丈夫、今回は残り距離が短い。
低体温になる前に終わるはず・・・

残りの距離はGPSのデータで予測していたよりも長かった。
U選手がいなかったら、ヤバかった。
ようやく今日のゴール兼宿泊先のスーパーホテルが見えた。
危なかった・・・でもなんとか初日リタイアは避けたな。
見ればホテルの脇にコンビニもある。
制限時間まであと20分くらいあるから、コンビニで夕食と朝食を買ってからゴールすることにした。
が、コレがまずかった。
コンビニの店内はなんと冷房ガンガン!
疲労困憊ズブ濡れの身体は一瞬で体温を失い、震えが止まらなくなってしまった。

ゴール自体は問題なかったものの、部屋に入ってからは恒例の低体温地獄。
低体温の恐ろしいところは、明らかに身の危険を感じるのに、身体がどんどん動かなくなっていくこと。
苦しくても、動ける内に身体を温める準備をしなければどうなることかわからない(死ぬのか?)
とにかくユニットのバスルームに入って、服を着たまま熱いシャワーをザブザブ浴び、その湯をそのままバスタブに溜める。
全身が湯に浸かるころ、死の恐怖は去った。
ああ、そうだ、服着たままだ・・・まずは靴下を脱ごう・・・
バスタブの中で左足に手を伸ばした瞬間、腹筋が痙攣した。
痛い!!腹をみると、腹筋にピンポン球みたいな塊ができてピクピクしている。
なんとか背中を反らせて痛みの引くポイントを見つけ・・・靴下に手を伸ばしてまた痙攣。
まったく滑稽なひとり遊びのようだ。
服を脱ぎ終わるのに何度これを繰り返したことか。

風呂を上がっても油断するとまたすぐに体温が下がるので、布団にくるまって横になる。
気持ちが悪い。呼吸が苦しい。動悸がする。
いや・・ホントに苦しい。死ぬのか??
きっと貧血がヒドイことになったんだ。血が黄色くなってるんじゃないのか。
酸素・・・酸素が足りない。
そうだ、運営に頼めば簡易酸素くらい貸してもらえるかもしれない。
ケータイに手を伸ばして、代表者のオキヤマさんにそれを伝えてみた。
「よし、すぐに買ってもっていってあげるから!」
ああ、わざわざ買ってまで・・・でも遠慮してる場合じゃないしなぁ・・・
あ、そうだ、YOMEにもいい方法がないか聞いてみよう。
看護職だからいいアドバイスくれるかもしれない。
LINEで相談したところ、「過呼吸じゃないの?」とのこと。
よくわからん。
酸欠なのか、過呼吸なのか、両方ってことはありうるのか??
だが酸素が届くまでの間、言われたとおりタオルを口に当ててゆっくり呼吸をしてみたところ、少し息が楽になってきた。
それからすぐにオキヤマさんが酸素を持ってきてくれた。
当然だが医療用ではなく、簡易的な薬局で買えるヤツだ。
早速それも試してみた。
あまり楽になった実感はなかったが、脇で見ていたオキヤマさんは「おお、すっと血の気が戻ったよ!さっきまで青白い顔してたからね!」と。
「また何かあったら電話してね。酸素はもう一本置いていくね」
言い残してオキヤマさんは出て行った。
まぁ・・・貧血なのか過呼吸なのかよくわからんけど、峠は越えたっぽい。
起き上がってコンビニで買ったカレーを一口食べてみたが、やはりダメだ。
胃が荒れて、スプーン二杯が限界だった。
その後、トイレで二回吐いた。

あと6時間ほどで、次の100kmに旅立たねばならない。
正気ではない。
だが、今日会った選手たち、彼らならどうするだろう。
前の夜に、明日は走らない、なんて言うだろうか。
そうか、スタートラインに立つ前に、すでにメンタリティで負けてたんだな。
これが超ウルトラの世界なのか・・・
まぁ明日のことは明日考えよう。
今は休むしかない・・・

2nd stage へ